龍の涙・鏡の血53 怪の章(12)

蛇良はふたりに笑顔を見せると、斑狩人の真正面へと飛び降りた。

斑狩人(はんたー)は眼の前に降りてきた蛇良を見つけると、威嚇のためか、二本足で立ち上がった。そして鋭い爪をつけた前足を蛇良に向かって振り降ろした。蛇良は寸前で避け、木の上に飛び乗った。

ミラーの頭の中に斑狩人を一発で仕留める方法が浮かんだ。
「剛龍、何か武器を持っていないか?小刀のようなものでいいんだ!」
「どうする気や?」
「あいつの脳天をかっ裂く!」
「脳天!?」
「そう。いいか奴の真上、出来るだけ高い位置で俺を落としてくれ。加速がつけば倍の力で刺し込める」
「勝算は?」
「蛇良、剛龍、そして俺の呼吸(いき)が合えば七分」
「残りの三分は?」
「運だ」
「運!?」
「心配するな。悪運の強さにゃー自信がある」
「……ミラー」
「やめろと言われてもやめねーからな!早く武器、寄越せよ!」
「そこに皮の袋があるやろ?」
「皮の袋…?」
確かに剛龍の背負った矢の束の中心に、細長い筒状の皮製の袋があった。
「その袋の口を開けてみ」
ミラーは言われるまま、紐をほどいた。剣の柄が見えた。ミラーはゆっくりとその剣を抜いた。

ミラーの手にしっくりとくる、この柄の感触は……?

「剛龍、これは……!」
「お前の剣やろ?」
それはまさしく、ミラーと共に戦い、守り続けてきた紅い瞳の龍だった。
「確かにそうだが…しかし…良いのか?」
「ずっと一緒に戦ってきた剣なんやろ?きっとお前のことを守ってくれると思うで」
「だが…こんなことをして、お前の立場が…」
「ミラー」
「何だ?」
「確実に仕留めろ」
「……承知した」
ミラーの剣を持つ手に力が入った。

斑狩人(はんたー)と蛇良の攻防が続いていた。奴は傷を負っている分、いつもより動きが鈍くなっているような気がした。これならばミラーや剛龍の手を借りずに、奴を討つことが出来るかもしれない。蛇良は腰に差した小刀の位置を確認しようとした。そのほんの一瞬、気をそちらに向けたせいか、木の枝を掴み損ね、そのまま地面に落ちてしまった。

!?

その蛇良の顔のすぐ横に斑狩人(はんたー)の鋭い爪が土に刺さった。蛇良は地面を転がりながら、奴から逃れた。体を捻りながらのため、服は乱れ、帯がほどけはじめた。
斑狩人の爪がその帯を通して、地面に刺さった。
「しまった!」
蛇良は動けなくなった。斑狩人はもう片方の足を蛇良めがけて振り下ろした。

行けぇっ!

剛龍の声で、艶鳥蹴狗がその前足に抱えていたミラーを離した。ミラーは剣を立て、真っ逆さまに、斑狩人めがけて落ちて行った。

でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぃっ!!!!!!

紅い龍の瞳の剣の先が斑狩人の頭に突き刺さった。ミラーは突き立てた剣に自分の体重をかけ、頭から背中、そして尾へと、力をかけ、切り開いて行った。
斑狩人は森中、いや国中に響きわたるほどの断末魔の声をあげ、血しぶきをあげながら、どうと倒れた。


「蛇良!蛇良っ!怪我はないか!」
剛龍は艶鳥蹴狗から降りて、蛇良の元へかけ寄った。蛇良は顔や体を土まみれにしながらも、笑顔でうなずいた。が、剛龍の隣にミラーがいないのを見た蛇良はすぐに起き上がった。
「ミラーさま…ミラーさまは!?」
「うぉぉぉ~い、ここだぁ~」
ミラーらしからぬ覇気のない声に、剛龍と蛇良は不安を覚えながら、声のする方へと顔を向けた。するとそこに剣を杖にして、よろよろと立ち上がるミラーの姿があった。

うぇっ!? 」
げっ!?

えっ……?何で?

ひぇぇぇぇぇっ! 」
お前が一番怖い~~~~~っ! 」
おい、ちょっと、逃げんなよ? おいっ!こらーっ!?

剛龍と蛇良は、全身に斑狩人(はんたー)の返り血を浴びたミラーのあまりにも凄まじい姿に逃げ出していた。

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この記事へのコメント

WAO
2007年12月02日 00:03
蛇良、危なかったねぇ……艶鳥蹴狗から飛び降りたミラーの剣で仕留められた斑狩人。返り血を浴びたミラーを怖がる剛龍と蛇良がおかしい。折角頑張ったのに、可哀相なミラー(笑)
2007年12月02日 18:00
艶鳥蹴狗は、剛龍さまの言葉がわかるの?
すごいを通り越してる。良からぬ輩に狙われなきゃいいけど。剛龍さまの命令しか聞かないのかな。
蛇良も、相当の使い手なんでしょうけど、ほんの少しの油断が命取りになるんですね。
剣を使いこなす者が1番強いと言われていますが、ミラー王子は、強大な敵を前にすごい作戦を考えましたよね。しかもやり遂げた…どんだけの精神力なんだろ。。。
ミラーの剣を持ち出した事で、剛龍さまの立場があやうくなりそうですが…そんなことはおくびにも出さす、男前ですよね。
剛龍様に戦いは似合わない気がする(読みが浅い?)けど、ミラー王子は根っからの武人なんですね。
Rain
2007年12月03日 19:39
WAO★三者三様の活躍のおかげで、怪物退治が出来ました~ヽ(^o^)丿こうやって遊べるほど、三人は仲良しにもなりました♪剛龍と蛇良がタッグにかかっちゃぁ、ミラーはいぢられキャラに甘んじるほかない?
Rain
2007年12月03日 19:46
てるひちゃん★それぞれが自分の得意技で戦った結果ですな。ミラーは剣の使い手でもあるけど、何より彼を彼たらしめているのはその精神力。果たして弱点はあるのだろーか(ふふふ…)そーなのそーなの!
剣のことは自分が責任を負えばいいことだし、とにかく怪物を退治すれば誰も何も言わないだろうし、言わせるものか!と、いう男気を「確実に仕留めろ」のひと言で現してみました。剛龍さまは守る男。ミラーは攻める男…そんなイメージでつくりました。

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