龍の涙・鏡の血57 怪の章(16)

主だった大臣からの挨拶と労いの言葉、賛辞を受け終わり、ようやくミラーは、ひと息ついていた。

ふと会場内を見渡すと、さっきまで見えていた胡蝶の姿がない。なんとなく、こちらを気にしていたような気がしたが、それは自分の勝手な思い込みだったのだろうか? ミラーは急に気持ちが沈んでゆくのを感じた。と、そんなミラーの様子に気付いたのか、元気の塊のような男がやってきた。

ミラぁぁぁぁぁぁっーーーーっ!

「おぉ~蛇良ぁ~、ご機嫌うるわしいようだな?」
「これ、美味い!美味いぞ、ミラーっ!」
蛇良は鏡の国から送られてきた葡萄酒を一瓶抱えて、そのまま飲んでいた。
「そ…それは良かった、喜んでもらえて、うれしいよ」
「ふふふふ~ん♪ じゃぁ、お前も飲め♪」
「おい蛇良……いくら酒の席とはいえ、ミラー殿は鏡の国の王子だ。礼儀を忘れるな」
剛龍は周囲の目を憚って、蛇良をたしなめた。
「あぁっ…す…すみましぇぇぇぇん……」
「剛龍、かまわんよ。今日は無礼講でゆこう」
「ふぇぇぇぇん……ミラーぁぁぁぁぁ…」
蛇良はミラーの肩につかまって涙を零した。ミラーが彼の涙を見たのはこれで三度目だ。
「蛇良……お前って、見かけによらず、涙もろいんだな」
「……ひっく、自分だって…そーじゃねーか…」
「え、俺っ?」
「見かけによらず、鈍いっていってんだよー」
「鈍い?」
「いーかげん、気付けよ、ばーか」
「ばっ!?ばーかって…!おいっ、剛龍、こいつ無礼だぞっ!」
だが剛龍は我関せずといった涼しい顔で、酒を飲んでいた。
「おい、ミラーぁぁっ!」
「あっ、はいっ!」
「他の男だったら、絶対に許さないけど、相手がミラーならしょうがねぇ…」
「はぁ?」
「まかせられる!」
「いや、だから、何が?」
「だぁかぁらぁ…ひっく……うぅぅぅぅ、ふぇぇぇぇぇん…」
「おい蛇良?蛇良っ?もぉ~だから、泣くなってば~」
困り果てたミラーを見兼ね、やっと剛龍が純山と米花を呼んだ。ふたりは蛇良を抱えると、
「ご迷惑をおかけしました」
と、下がっていった。

「まさしく…酒に浸かった蛇だな……」
「せやけど、さすが蛇良や。いろんなこと、ほんまによぉ見とる……」
「……あぁ……いい男だ……」
「ミラー」
「ん?」
「連れて帰るのは……どちらかひとりにしてくれ」
「……え? 」
「そのつもりなんやろ?」
「………よいのか?」
剛龍はミラーの硝子の杯に葡萄酒を注いだ。
「今宵は『誓いの夜』、口説き落とすには、この日をおいてないぞ?」
悪戯っぽく笑うと、自分の杯をミラーの杯にこつん…と当てた。

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この記事へのコメント

愛戦士桜
2007年12月11日 11:49
「連れて帰るのは……どちらかひとりにしてくれ」
…て!!!!!どっち!!!!!
ミラーの「よいのか?」てどっちのこと!!!(笑)
うーん……うーん……悩む(爆)
桜は……聞くまでもなく…♪
チビにゃん
2007年12月11日 22:30
ミラー様の『…よいのか?』って、どっちのことを考えて答えたんだろう?気になる…。
胡蝶様のことだとしたら…どんな言葉で口説いちゃうのかなぁ~♪ちょっとドキドキするんですけどぉ~♪
愛戦士桜
2007年12月12日 12:33
やほ~♪
俳句ゲッチュしたぜよ★
「その涙 挨拶される 涙かも」by ドーモトくん♪
Rain
2007年12月12日 13:25
愛戦士桜★どっちって、そりゃー……。桜ちゃんが連れて帰ったら、龍の国は鯱の国と合併?最強の国になりそうな気はするけどね(笑)ドーモト俳句のゲット、ど~もと~♪調子のいい句だけど悲しい句だよね…。
Rain
2007年12月12日 13:30
チビにゃん★ミラーさん、これまで、そういうことをしたことあったんでしょーか(笑)戦略家ミラーも大慌て?そもそも剛龍さまの言った『誓いの夜』。ミラーはこの言葉の意味がわかってるんでしょうか(笑)?
SHINE
2007年12月12日 20:52
連れて帰られたい一人が、ここにもいるよぉ!(笑)
胡蝶の想いに応えて欲しいけど、どうなるのかな?
果たしてロミオとジュリエットのような関係になってしまわないかと・・・。
鏡の国が、龍の国と国交を結ぶということになるとすると???
いくら龍の国は友好的な感情があっても、鏡の国は果たしてどうなのかなぁ?って不安になりました。
Rain
2007年12月13日 19:11
SHINE★ここに来るのはそういう人だらけじゃろ(笑)
そもそも作っている人間が、人間ですからねぇ…。
これまでにハッピーエンドにした話ってあったかの?
ただ、この物語の結末はまだ見えてません(どーすんだい!?)救いはいれたいなーと思っています(^^♪

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