龍の涙・鏡の血60 血の章(2)

イクタ准将らはそんな彼らを黙って見ていた。ミラーはそれは、彼らが心情を理解してくれたからだと思っていた。

だが剛龍の後ろ姿がすっかり消え、馬の蹄の音が聞こえなくなったとたん、彼らの態度は豹変した。兵士達がいっせいにミラーに向かって銃を構えたのだ。
「イクタ准将、これはどういうわけだ?」
イクタ准将はそれには答えず、兵士にミラーから全ての武器を取り上げ、縛るよう命じた。さすがのミラーも鼻先に銃口を当てられては為す術がなかった。
「……くそっ!お前たち……こんなことをして…ただですむと思うな!」
「剣はこれだけか? 名前を記した短剣を送ったはずだが、それはどこへやった?」
紅い瞳の龍を検めていたイクタ准将が訊ねた。が、ミラーは答えなかった。
「……仕方がない…この剣に血を塗って帰るか…」
「血!?」
「マーティ少佐。その者を所定の位置へ」
「はいっ!」
「マーティ…!?」
ミラーの腕をつかんだのは、あのポートランドの戦で抜け穴を見つけたマーティ・アンガだった。
「そのまま、まっすぐ歩け」
ミラーはマーティに促され、大きな木の下へと歩かされた。ミラーはその木の幹に縛りつけられた。どうやら、これから自分は処刑されるらしい。
「貴様ら……裏切ったな!」
「我々は命令に従って行動しているだけです」
イクタ准将は表情ひとつ変えずに言った。
「では誰の命令だ!」
「国王にございます」
「国…王?……父上が?」
実の父が息子を殺せと命じたと…?そんな馬鹿な話、あるはずがない。と、いうことは、ひょっとして……最も恐れていたこと、政権交代がすでに起きてしまっているのか?
彼のいう国王とは、叔父のことかもしれない。だから、今、ここで先王の血を絶っておく必要がある。そういうことなのだろうか?
「マーティ少佐。何をぐずぐずしている!早く準備をしろ!」
「はいっ!」
マーティはミラーをきつく縛ったあと、ポケットから目隠し用の白い布を取り出した。

そんなものはいらん!私は最期の最期まで目を開け、お前たちの顔をこの胸にしかと焼付けておく!お前たちには私を永遠の眠りにつかせることは出来ない!たとえ銃で撃たれ、この身が滅びても、魂だけは生き残る!そして私は名実ともに冥界の王子となって、卑劣なやり方で私を死に追いやったものたち全員に復讐してやる!

「ふん…負け犬の遠吠えとは、こんなにも耳障りなものだったのか。マーティ少佐!目隠しはやめだ!それで、そのやかましい口を塞げ!」
「負け犬だとっ!?……」
マーティはミラーの口に白い布を当てて、縛った。ミラーは無表情に淡々と事をすすめる彼を鋭い眼で睨みつけた。すると彼は表情を変えずに、
「……ミラー殿…その瞳で、どうか私だけを見つめていて下さい」
と、耳元で囁いた。

銃、構え! 」

イクタ准将の声でマーティ少佐を含めた五人の兵士がミラーに向かって銃を構えた。

ミラーはその五人をミラーから見て右から順番に睨み付けていった。そして、いちばん最後、マーティ少佐の上でその視線を止めた。

自分だけを見つめろとはどういう意味だ?
自分の弾でこの胸を貫いてやるという、俺に対する挑戦状なのか?

それとも……?

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この記事へのコメント

2008年01月17日 19:28
こういう展開かい!?恐れていたことが、とうとう訪れてしまったのね?
ミラーさま・・・このまま処刑されてしまうなんてことは、ないと思うけど。
やはり、気になります。
どうなってしまうんだろう。マーティー少佐の言葉が気になります。
救いがあるのか・・・・。
WAO
2008年01月18日 12:08
そうか…血の章なのね…闘い苦手やけど頑張って読むわ。それにしても、迎えに来たと思ったら処刑?鏡の国に何が起こったんやろう?ハラハラするなぁ…
愛戦士桜
2008年01月18日 13:15
龍の国ではあんなに温かい空気に包まれて帰国したのに なんと物々しい鏡の国(汗)
…そういう国だって判ってててもこの重々しさはいやーな感じだねーー;
この空気、絶対剛龍さまは感じていたはずだよね……。あードキドキする。><
Rain
2008年01月18日 20:31
SHINE★こういう展開なんだよ。ってか、もーこの先…ずっとしばらく…ご覚悟を!アクションもの好きなら楽しめる…かな(笑)
Rain
2008年01月18日 20:37
WAO★なんだろーね。こういうシーンを描いているとテンションあがるの。それは残酷なものがすきというわけではなく、いかにしてそれを乗り越えるかということに魅かれるからなんだけど。闘うふたりの男を応援してあげてちょ♪
Rain
2008年01月18日 20:39
愛戦士桜★剛龍さま…うん、彼もまた…あー!
言えない!この先は言えない(>_<)だけど、まだまだドキドキハラハラはつづくの。桜っこも、パワーつけてついてきてね!

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