龍の涙・鏡の血65 血の章(7)

トーヤはひとつひとつの部屋の扉を開け、中を確認して行った。

ほぼ、この国を手中におさめたといっても過言ではなかった。この国の王子とやらについてはミラーを送ったあとの帰り道に軍隊を一個配置しておいた。飾り物のような男ということだ。その首を獲るなどわけないだろう。ミラーについても、たとえ彼が類まれな武将だとしても、イクタ准将を筆頭にエリート中のエリートを揃えた特命部隊相手、ましてや彼の武器はあの紅い瞳の龍の剣と短剣だけだ。それだけで何が出来る。あとはこの国の王と王女を捉え、その血を絶てば、すべてが終わる。トーヤ将軍の初陣を大勝利で飾れるのだ。

トーヤは城に隣接されている病院へと足を踏み入れた。小さな国にしては衛生的でそれなりの設備も整っている。おそらく豊富な鉱山資源を輸出し、得た外貨で揃えたのだろう。トーヤはひとつひとつの部屋の扉を開け、中を確認して行った。突然の襲撃にあわてて出ていったと見え、何もかもが中途半端に投げ出されていた。それは、ほんのつい数時間前まで、ここで普通の生活が行われていたことを物語っていた。

戦争とはそういうものだ。あっという間に日常を非日常に変える。

トーヤは最も奥の部屋の扉を開いた。たくさんの瓶が整然と棚に並べられており、病院独特の強い臭いが鼻を突いた。どうやらここは薬を閉まって置く部屋のようだ。
「……何か……秘薬があるかもしれんな……」
トーヤがそこに一歩、足を踏み入れようとしたとき、
「トーヤ将軍!」
カザマ大佐が声をかけた。
「なんだ!王女が見つかったのか!?」
「いえ。そうではないのですが、実は厄介なことに…」
「どうした?」
「特命部隊を監視していた伝令係から連絡が入りまして…」

ミラーのことかっ!?

!?

「………?………」
「トーヤ将軍?いかがなされました?」
「……あぁ…いや、ミラー王子のことだな、それがどうした?」
トーヤは後ろ手で扉を閉めると、部屋の外へ出た。

胡蝶はその話の続きがどうしても知りたかった。音をたてないように、ゆっくりと床を這い、扉の方へと近付いて行った。そして扉にぴたりと耳をあて、彼らの声を聞いた。
「……………?」
はい…」
「……わかった。……では心してミラー王子をお迎えしよう……」
くぐもっていて、ところどころしか聞き取れなかったが、どうやらミラーがこちらへ向かっているようだ。それは龍の国を助けに来るためだろうか?しかし、今、このトーヤという男はミラー王子をお迎えする…と言った。彼らにとってミラーはまだ王子ということであれば、この戦の仕掛け人はやはり……?

と、胡蝶の目の前の扉が勢いよく開いた。



「ここで……何をしている?」
無精ひげをはやした、背の高い男が胡蝶を見下ろして、言った。
「……その言葉、そっくり、あなたにお返しいたします」
「何?」
「ここは神聖なる龍の神の国。そなたのような無礼者が入れる場所ではない!神の怒りに触れる前に、即刻、立ち去りなさい!」
「それは好都合。ちょうど、その龍神とやらにご挨拶したいと思っていたところだ」
トーヤは部屋の扉をぴしゃりと閉めた。胡蝶は窓に向かって走り出した。ここは二階だったが、飛び降りれば、まだ逃げられる。望みはあると思った。
「逃げても無駄だぞ。城の周囲は全て鏡の国の兵士が囲んでいる」
トーヤは大きな声をあげながら、胡蝶を追いかけてきた。胡蝶は薬棚の間をまるで迷路に放り込まれた鼠のようになって逃げた。だが、どの角を曲がっても、トーヤの影がついてくる。窓に向かって逃げたはずなのに、いつの間にか、胡蝶は部屋の隅へと追い込まれていた。
「追いかけっこはもぉ、お終いなのかな~?」
再び、トーヤが胡蝶の目の前に姿を現した。

そして、一歩…また一歩と胡蝶へと近づいてきた。



 ありがとう 

『龍の涙・鏡の血』の主人公、ミラーと剛龍のイメージイラストを
チビにゃん☆日記のチビにゃんさんが描いてくれました

トップページ及び右脇のウェブリシールにもふたりはおりますが……

こちら →  ミラー & 剛龍  

に行きますと、拡大版をご覧いただけます。

可愛くって、素敵ですよ~

これ…フィギュアにならんかなぁ…

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この記事へのコメント

2008年01月22日 21:36
うんうん!すごい、可愛いよぉ!!チビにゃんちゃんの2人のイラストぉ♪
でもね?本当に物語は、ハラハラもんで。
胡蝶は、どうなってしまうの?早くミラーさま、助けに来てぇ!!と心穏やかでないの。
戦に慣れた鏡の国と平和だった龍の国。赤子の手をひねるほどに、たやすく倒されてしまうのでしょうか?でも、望みは捨てずに読み続けます!
愛戦士桜
2008年01月22日 21:43
TOPにさっそく素敵な可愛らしい龍鏡コンビの2人がいたね~★
ほんとだーーー!ウエブシールにもなってるーーーー♪
物語も盛り上がってきていろんな意味でドキドキだね!
トーヤ!!!!あんたここでも野獣かよー!!!!桜の(壊)剛龍さまはどうしたのーーーー!!!!あーーーーもう!!!(謎の叫び)
チビにゃん
2008年01月22日 22:08
ドキドキ(>_<;))
胡蝶様…どうなるの…助けは来ないの?野獣…恐いぉ~(T_T)
ちびミラー様と、ちび剛龍様は、この厳しい状況には合わない、ほのぼの三頭身…(笑)トーヤは、三頭身にしても恐くなりそう…。全キャラ三頭身イラストにしたら面白いかもしんない。
Rain
2008年01月23日 19:45
SHINE★ほんとにね~すんませんなぁ…。残酷なことを考えられる自分がいちばん怖い…。それを中和してくれるのが、このイラストです♪
サンキュー!!

Rain
2008年01月23日 19:49
愛戦士桜★「あんたここでも野獣かよ」のツッコミ最高!爆笑!と…笑ってられない、本編。
桜だけじゃなく、いろんなところから悲鳴や、
「もうやめて!」の声が聞こえてくる…。でもゴメン。やめられない。このまま走るよ~♪
Rain@ほんとに可愛いよ~♪
2008年01月23日 19:56
チビにゃん★トーヤの三頭身!想像つくだけにおかしい(笑)タイトルが血の章だけにね。緊張のシーンは続きます。でもチビにゃんの可愛いイラストでそれが緩和できそう♪ありがとう!

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