龍の涙・鏡の血66 血の章(8)

「それ以上、近寄るな!」


胡蝶は短剣を抜き、トーヤに向けた。
「……そうか…そういうことだったのか?」
「?」
「目印がついているとは、このことだったのか…」
「目印?」
「この国の王女に目印をつけておいた。その女を捕らえて、人質にしろと、ミラー王子から伝令をもらっていたのです」
「偽りを申すな!」
「可哀想に……すっかり、ミラー王子を信じきっているのだな…。しかし王女殿、それがあの男、ミラー王子の正体なのですよ。こうして敵国の王女をたぶらかし、寝物語の合間に、重要な情報を得る。彼が最も得意とする戦略なのです」
「嘘です!」
「そう思いたいのも無理はない…しかし彼にはすでに国に正式な王妃がいるのですよ。来年には待望のお世継ぎが誕生されるのです」
「そんなこと、彼は何も言わなかった!彼は…私を正式な王妃として迎えるといってくれた!これが、その証だと……」
「なんですって!もし、それが本当にミラー王子の短剣であれば、一大事……ちょっと、あらためさせていただきます」
トーヤは胡蝶の手から短剣を受けとるため、うやうやしく、胡蝶の前に膝をついた。
「………」
胡蝶はトーヤにその短剣を渡すと見せかけ、

!?

その短剣をトーヤの太ももに突き刺した。その隙に胡蝶は逃げようとした。

くっそぉ………!!!

が、トーヤの長い腕が勝り、胡蝶は足首を掴まれた。

ふざけやがってぇぇぇ!!

トーヤは彼女を床に押さえつけると、足に刺さった短剣を抜き、構えた。

!?

と、何かが、ぬるりとトーヤの背中に入った。

それはひんやりとしたものだったが、自らの意志を持っており、トーヤの背中を這いずりまわっていた。

ひっ……ひぃぃぃぃぃっっ!!!

トーヤがその正体に気付いたときには、もう天井いっぱいに蛇が集まっており、互いに絡み合い、盛り上がり、その重みに耐えられなくなってきた蛇たちが、ぼとぼとと床に落ちてきた。

ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!

頭の上に、肩に、容赦なく雨のように次から次へと降ってくる。細くて小さいものは隙間を狙って服の中に入ってくる。蛇が大嫌いなトーヤにとって、それはまさに地獄だった。

その蛇の雨に隠れて、天井から、蛇良が降りてきた。
「胡蝶さま!胡蝶さま!?しっかりなさって下さい!胡蝶さま!?」
蛇良は胡蝶の耳元で叫んだ。しかし、胡蝶は気を失っているのか返事をしなかった。早く安全な場所に移さなければ。蛇良は胡蝶を抱き上げた。と、

この……化け物がぁ!!

背後から鏡の国の大男が声をあげながら、短剣を振りかざしてきた。
「くっそ…ぉ…!!!」
蛇良は煙玉を床に打ち付けた。またたく間に部屋いっぱいに煙が立ち込めた。
「な…なんだ、これは……」
トーヤはむせながら、煙の幕を切り裂くように短剣を振り回した。



!?

何かをかすったような手応えがあった。

だが、それが何だったのかは確認することが出来なかった。
煙が消えたとき、そこにはわずかな血痕があるだけで、王女の姿も、一瞬見えた化け物の姿も、大量の蛇も、いなくなっていたからだ。

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この記事へのコメント

愛戦士桜
2008年01月23日 21:12
蛇が大嫌いなトーヤ(大爆)
蛇良!!!!よく間に合ったね!!!
でもなんて卑怯なトーヤ!胡蝶の心をズタズタにして!!!!許せない!!!!!!(怒)
WAO
2008年01月24日 15:01
蛇良~♪胡蝶を助けに来てくれてありがとう~何だかドロドロの闘いになってて、怯んでるあたし(汗)剛龍はどうなってるのか、とっても気になる…そしてミラーは今何処?ハラハラするなぁ!!!!
2008年01月24日 21:07
戦は人心を狂わせてしまう・・・。何が真実か分からなくなってしまう。人を信じられなくなる。胡蝶は、どうかミラーさまを信じ続けていて欲しい。今は、龍の国を救うことが大切。そしてミラーさまへの不信が、解決してくれることを願っているよ。
Rain
2008年01月24日 21:31
愛戦士桜★なんか笑えるでしょ?彼にとっちゃー笑い事じゃないんだけどね。そんだけ蛇がいたら…喜ぶのは屋良くんぐらいだと思う(笑)
さて、そろそろ彼に登場してもらいますか?
Rain
2008年01月24日 21:37
WAO★怯えさせてごめーん(>_<)でも…この後はここほど肉体的に酷い描写はないはず…この後は精神的に…!?蛇良、かっこいいっす!だってずーっと胡蝶さまだけを見てきたんだもの。何をおいても助けにまいります!はい!ではまず、ミラーさん!カモーン!
Rain
2008年01月24日 21:41
SHINE★人の心が狂って戦になるのか、戦のせいで狂うのか?…どちらもだよね。胡蝶も今はパニックだろうけれど…。きっと強い何かが彼女を支えるはず!
2008年01月25日 08:56
ヒールなトーヤ将軍にドキドキしてたんだけど…よくそんな咄嗟に、目印をつけた…とミラー王子が言ってたなんて嘘が思いついたなぁ~とか。王女を落とすのは、あんたの戦法でしょ?…とかわくわくしてたのに、蛇がこわいなんて、がっかりしちゃったな。蛇良が見せたのは幻ですか…ほんもの?てるひ、蛇、好きだよ。
傷ついたのは、胡蝶さまをかばった蛇良なのかな?深手を負ってなければいいけど。。。
Rain
2008年01月25日 19:54
てるひちゃん★あたしもヒール好きだけど、君もかい(笑)なんだよ。あんたやっぱダメじゃん的なところを出したくて。それに戦いのメインシーンは別に持っていきたくて。それまでは我慢(我慢笑)あまり痛いシーンを続けるのなんだしね。私も蛇嫌いじゃないですよ~。爬虫類や両生類、昆虫類、平気♪傷を負ったのは!?

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