龍の涙・鏡の血75 涙の章(7)

ミラーとマーティは艶鳥蹴狗が落ちたと思われる方向へと走って行った。


剛龍、どこだ?どこにいる? 

鬱蒼とした森の中をミラーとマーティは探し歩いた。それを目にしたくないせいなのか、ミラーにはだんだん、まわりの風景が見えなくなっていた。この眼でそれを確かめるくらいなら、このまま何も見つからない方がいい。その方がまだ、いくらかの希望がある。そんなことまで考えはじめていた。

だが、それは叶わなかった。

「ミラー将軍、あちらに!」
マーティ少佐の指差す方に艶鳥蹴狗の大きな背中が見えた。探していたものが想像していたとおりの姿で現れた。翼は上方へ折れ曲がり、その下の地面がじっとりと濡れていた。

この血は艶鳥蹴狗のものか…それとも……。

ミラーはごくりとつばをのむと、そちらへ歩いて行った。

どうか…どうか…無事でいてくれ……。

だが横たわる艶鳥蹴狗の周囲に剛龍の姿はなかった。落ちる瞬間にどこか別の場所へ移ったのだろうか、それともこの下敷きになっているのか?ミラーは艶鳥蹴狗の翼を持ち上げた。と、その両方の翼に包まれるようにして、剛龍がいた。眼を閉じている剛龍をミラーは揺り起こした。

「剛龍!剛龍!おいっ!剛龍っ…!眼を覚ませ!剛龍!剛龍っ、剛……っ!?」

ミラーは再び、つばをのんだ。
「………」
剛龍は手に短剣を持ち、その切っ先をミラーの喉元に当てていた。彼の眼つきの鋭さからすると、もうずっと前から意識は戻り、彼が近くにくるその機会をじっと待っていたようだ。
「貴様!その手にあるものをどけろ!さもなくば…」
マーティ少佐が剛龍に向けて銃を構えた。
「マーティ!やめろ!」
「ですが!?」
「マーティ、銃を下げるんだ!」
マーティはしぶしぶ銃をおろした。だが引金からは指を離さずにいた。
「剛龍……なぜだ?なぜ、こんなことを?」
「自身の胸に聞いてみるがよい……」
「剛龍、龍の国への侵攻は俺の企てたことではない。だが…その責任の一端は俺にもある。だから…だからこそ、龍の国へゆき、みなにあやまりたいのだ!」
「……どうしてもゆきたいと…?」
「あぁ……」
「ならば……」
「ならば?」

私の首をとってからゆけ!

剛龍はそういうと、ミラーに馬乗りになると、彼の胸めがけて短剣を振り下ろした。




硬質な音が森に響きわたった。


ミラーは紅い瞳の龍で、剛龍の短剣を弾き飛ばしていた。


「……そ…んな…な…ぜ…?」


ミラーは剛龍から殺気を感じてしまった………。

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この記事へのコメント

愛戦士桜
2008年02月03日 22:22
剛龍さまの殺気…ふたりの悲しい王子。
ミラーにも彼の気持ちの意味が判ったでしょね…そうしないと…思いきれないから…でもやっぱり悲しい…そうするしかないのかな…。そしていまその場には2人だけじゃない、もう1人いるもんね……。目を背けるわけにはいかないね。
Rain
2008年02月04日 20:29
愛戦士桜★ここにもう一人いる。そうなの。
そこがポイントでもあったりする?んー。うまく言えないけど。禅問答みたいなシーン、物語になっちゃったけど、ゴールはもうすぐ。ここが一番苦しいとき!?

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