龍の涙・鏡の血77 涙の章(9)

「うぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」


ミラーの剣は剛龍の剣を弾き飛ばした。剛龍の手を離れた剣は宙を舞い、それはミラーの左手へ吸い込まれるようにして、おさまった。剛龍の剣にも龍が刻まれていた。その貌形はまったくミラーの右手にあるものと対を為すように作られており、しかも、龍の瞳には碧い宝石が埋め込まれていた。

「……こ……これは……?」

これはまさしく!

兄とともに無くなったとされている、碧い瞳の龍!

では……?

剛龍が………?

俺の兄……!?

「剛龍……お前……?」

剛龍は自分と会ったあの時から、自分が兄であることを知っていたのだろうか?龍の国にいる間中、自分を殺す機会を虎視眈々と狙っていたのだろうか?いや……あの国で過ごした、あの幸せな時間に偽りはない。何ものにも変え難い、素晴らしい時であったことに間違いはない。その証拠に剛龍が兄だとわかった今でも、なお、彼を敬い、慕っている。むしろ、彼が兄であったことに、ミラーの胸は熱く踊り、あふれるほどの喜びに満たされていた。

そして同時に息も出来ないほどの悲しみがわいた。

剛龍は、またしてもここでミラーの身代わりになろうとしていたのだ。兄である自分の手でミラーを殺すくらいなら、その前に自分が殺されてしまえばいい。そうすれば、もう誰もミラーを苦しめることはなくなる……。これまでの行為は、そう考えてのことだったのだ。

定められた運命を受け入れる生き方をしてきた兄がたったひとりの弟のために、自分の命を投げ打ち、その運命に抗おうとしている。
ならば、自分の運命に抗うことばかりしてきた弟はたったひとりの兄のために、自分の命を投げ打ち、その運命を受け入れよう。

「剛龍!」
「!」
「……逢えて、よかった!」
「ミラー、何を!?」

ミラーは両方の剣をしっかと握り直すと、頭の上に掲げ、交差させた。
と、黒い天を切り裂き、大きな稲妻がふたつの剣に向かって、まっすぐに落ちてきた。
稲妻は剣を貫いた。そしてその光は螺旋状になって、ミラーの体の中を走り抜けていった。


うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 


断末魔の叫びを上げ、ミラーはどう……と、倒れた。

「ミラーーーーー!」
「ミラー将軍!」
「ミラー!ミラー!ミラー!」
剛龍はミラーを抱き起こし、何度も名前を呼んだ。
「……こう…りゅ…」
「ミラー!生きとんのやな!?生きてるんやな!?」
ミラーは首を振った。自分が生きている限り、この呪いは行き続ける。それは剛龍を苦しめることになる。ならば、もう、ここで終りにしよう……。
「……こ…れ…で…とどめを…………」
ミラーは剛龍の手を腰の脇の小さな短剣へとやった。
「いややぁ!!」
「……お前にしか……でき…ない……たの…む…」

ここでミラーの胸を貫けば、「兄は弟を殺し、国は滅びる」という呪いの通りになる。

だがこれで彼をずっと苦しめていたものから、解き放つことが出来るのなら……。

剛龍は強い思いを持って、短剣を手にした。

ミラー、愛しい弟よ。お前の胸を貫く剣、これは憎しみの剣ではない。
私の精一杯の、愛を込めた剣だ。お前の抱えている苦しみ、痛みは全て、私が取り除いてやる。だから、安心して、眠るがよい……。

剛龍はミラーの胸を差し貫いた。
「ありが…と……兄……さ…ん」
ミラーは剛龍の腕で静かな微笑みを浮かべた。
「ミラー…?ミラー…?」
彼の返事はなかった。

だが、剛龍は叫ばずにはいられなかった。


ミラーーーーーーーーーー!


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この記事へのコメント

愛戦士桜
2008年02月05日 20:43
泣きました………
WAO
2008年02月05日 22:51
ミラーほんとに死んじゃったの?
2008年02月06日 01:45
いやぁああああ~~(TT▽TT)
なんて悲劇…。呪いをかけた奴が憎い…。
王子達は何も悪くないのに…。生まれながらにして、こんな宿命を背負って生きていたなんて…。
お互いにお互いを思うあまりの、この結果。
二人とも可哀想すぎる…。
唯一の救いは、他の誰でもない愛する兄の手で……最後を迎えられたことね…。
ミラー様……
どばーーーーっ (┬┬_┬┬)
Rain
2008年02月06日 21:47
愛戦士桜★悲しませてごめん…(>_<)これが感動の涙に変わるよう精進いたします。
Rain
2008年02月06日 21:50
WAO★うーん…と…それは次の最終回で(^^ゞ
いろんな風に捉えて、解釈して下さいね。
あえて「こういうことなのだ!」とは言わないようにしているので…。
Rain
2008年02月06日 21:54
チビにゃん★呪いをかけたのは作者の私(笑)
でも「お互いにお互いを思うあまりの…」ってわかってるじゃない~♪それがわからなくてかけられた呪いだったんだもんね。どばーっ?ってそれは涙かな?ごめんねー悲しませて。
現在発売のPOTATOという雑誌にミラー様がご降臨されているという噂だよ~♪
2008年02月06日 23:10
涙の章、ひっそり(笑)読ませていただいていたのですが、パソコンで読み直しながら、ここまできました。この物語を書き始めた時に、相手を思いながら、泣きながら刀をふるう。そんなシーンを書きたいっておっしゃっていましたよね。
剛龍さま、ミラーさまご兄弟の思いは、某舞台の某シーン(笑)あの人の決意に相通ずるものがあるな…と思いつつ、ずっと読ませていただきました。
呪いを祝福に変えることができたのか…期待と不安を抱えながら、最終回を読ませていただきますね。
Rain
2008年02月07日 06:19
てるひちゃん★いやーん恥ずかしい(>_<)(何がよ?)お見通し?特に涙の章の入ってからは、某舞台のセリフの数々が頭の中でぐるぐる。
その声を反芻しながら書いておりました。
いつも的確なアドバイス、愛ディアありがと♪

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