Peace!19

竜次は智成に捕まった。

近隣の保育所におやつ用の小さな煎餅を配達した帰りに立ち寄った大型書店で、ばったりと出くわしてしまった。しかもそれが智成には全く不似合いな、男性ファッション雑誌のコーナーだったから驚きだ。唖然とする竜次に、智成は「ちょっと来い」といつもの有無をいわせぬ強引さで、長峰酒店までついてくるよう命じた。

「そこ座って待ってろ。かき氷、つくってやるから」
長峰酒店は氷屋も兼ねている。裏庭に氷室があり、夏祭りなど大量の氷が必要なときはここから搬入される。夏は期間限定でかき氷屋も開いていた。
「竜、いつものにするかー?」
「うーん……今日は…イチゴ気分?」
「よっしゃ、それなら練乳サービスしてやるよ」
智成の大きな手で作られたそれはラーメン用の器に山盛りとなって出てきた。
「さぁ食え!遠慮なく食え!がむしゃらに食え!」
「……いただきます……」
これ全部食べたらお腹を壊しそうだな…と思いつつ、でも残すと怒られるしな…と、竜次はかき氷の山を少しずつ崩していった。そういえば子供の頃、夏休みはここに来て長峰のおばぁちゃんの作る、具はキャベツだけの即席ラーメンとかき氷を食べていた。そのおばぁちゃんはもういないけれど、こうして懐かしいかき氷の味は残っている。それはなんだかとてもうれしかった。
「それで竜よ」
「んー?」

シャクシャク……かき氷の山はまだ崩れない。

「……舞子……なんだけどよ?」
「うん」

シャクシャクシャク……うん♪いい具合にイチゴと練乳が混ざり合ってきた。

「あいつ、男、いるのか?」
「いるわけないじゃん」

いただきまーす♪

「ほんとか!?」
「うん、昨日、本人がそう言ってた」

おいすぃ~♪

「で、でもよ?今日、見たことのない男と歩いていたぞ?」
「あぁ…結構、イケメン系のでしょ?」
「あー?イケメンかぁ?あれのどこがー?なんかホストっぽいっちゅーか、チャラいっちゅーか?」
「……いちおー、うちの親戚なんだけど……」
「……し、し、し、親戚?」
「従兄」
「イトコ!?あぁ、そうかそうか、なーんだ、イトコか……ったく、何が彼氏だ…だいたい、それなら、そうってあの男もはっきり言やぁ、いぃんだよ…」
「何?」
「あぁ、いや何でもねぇ、食え!思いっきり、食え!しかし、なんだな……あいつ妙な男だなー……ってか、男……だよな?」
「うん、だって……あの(キン)……」
筋肉…と、言ってから、竜次は絶句した。あの衝撃の映像が再び瞼の裏に甦ってきたのだ。

ゆうべはその映像が頭から消えず、まんじりともせず朝を迎えてしまった。光助の顔をみるとそれが思い出されてしまうので今日はわざと目を合わせずにいた。それなのに今、自ら衝撃映像の再生ボタンを押してしまった。竜次はその映像を消去しようと、しゃかりにかき氷を口の中に入れた。

「おい竜、なんだって?キンがどうしたって?」
「キ……」
「き?」
「キーン……」
「キーン?キ?」
「キター!!!!!」
「キンキ来たー!?って、どこだ、どこに来たー!?」
「ここ……」
竜次はこめかみを差した。
「ここって、おめぇの頭の中にいんのか!?あ!?出てこいよ!ほれ、出てきやがれってんだー!」
智成は竜次の両方のこめかみを拳骨でぐりぐりと押した。


「……ったく、あわてて食うからだよ。氷は逃げねぇんだから、ゆっくり食えよ」
逃げないかもしれないけど、溶けるよ…と、言いたかった。でもやめた。そんなことを言ったら、次は格闘技をかけられるに違いない。
「しかしイトコってことはー、あれか?竜の父ちゃんの方の兄弟の子供か?」
「えっ?」
「いや、そーいうことなんだろ?」
「……あ、そっか……でも、うーん????」
竜次の父も祖父同様、香月家に婿に入った。旧姓は東城という。父には兄と姉がそれぞれひとりずついる。伯父はもちろん東城だし、伯母も結婚しているが上原という名ではない。と、すると母方のきょうだいの子供ということになるが、母には兄弟はもちろん姉も妹もいない。

つまり、その光助の母親というのが裕次郎の隠し子で、母の腹違いのきょうだいということになる。

………のか…な…?

「おい、竜?どした?」
「……なんかさー……」
「うん?」
「……謎なんだよね」
「なぞ?」
「うん……あの人、つかめないってゆーか、実体がないってゆーか…」
「って、おいおい、なんだよ、まーだ盆にはちーと早ぇぇんじゃねーのか?」
「でも……」
「でも?」
「ひょっとしたら、あの人の正体って…」
「なんだよ?」
「それかもしれない……」
「そ、それって?」
「幽霊……」
「うぎゃぁぁぁっ!!!やめろーーーーっ!!!」

竜次は長い付き合いの中でよく知っていた。

智成の弱点が、怪談話であることを……。

へへへっ。さっきのお返しだよーん♪ 

竜次は心の中でガッツポーズを取りながら、器の底に溶けたいちごミルクを掻き込んだ。


キ……


キーン!


キターーーーーー!

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この記事へのコメント

2008年09月13日 19:01
家系の話になると頭の中が、こんがらがるSHINEであります。(笑)
それにしても・・・「キンキ来たー!!」は笑えた。
どこどこ?って探す智成さんが、おかしかったぁ!!
やっぱり、舞ちゃんのこと好きだったんだねぇ♪
本当に、分かり易い!!
竜次くんに問いただすところなんか男らしくて(?)
はて?男らしいのか?でも、好きな気持ちがまっすぐな人って、いいよね?
光さん?・・・どうなのよ?(笑)
2008年09月14日 21:31
サークル参加申込したよ~!

私も、サークルを作りたいんだけど どうやって作ったらいいのかなぁ?
愛戦士桜
2008年09月14日 21:46
いとこ言っても複雑だよね…今まで親戚付き合いしてないしねー。
智兄もいつまでも近所の気のいい兄ちゃんしてたら舞っち さらわれるぞー(笑)恋愛も結婚もタイミングが大事だもんねー♪
コースケの裸体を見ちゃったらあまりの綺麗さがちょっと衝撃的すぎるよね(ほほほ)
氷さくさくしてるリュージの隣で桜もサクサクしたいべよ(壊)
Rain
2008年09月15日 19:51
SHINE★読む方は流してもらっても結構です(笑)でも創り手としてはそこんとこ押さえておかないと、リアリティがなくなっちゃうからね(笑)ちょっと離れたところからみるとわかりやすい男なんだけどさー、当事者にすると…なかなか気付かないみたいなんだよね。うん、そんんなもんだよね。
Rain
2008年09月15日 19:52
ゆめちゃん★あ、出来ましたか(笑)それはよかったです~(*^^)vお友達、増えるといいね♪
Rain
2008年09月15日 19:54
愛戦士桜★じーちゃんだって「うちの孫」としか言ってないしね。恋愛も結婚もタイミング…それ智成にがつんと言ってやってちょ!ってね(笑)そう思った人が愛戦士桜以外にもいたみたいだよ~うふふ♪そうそう。裸体♪
サクサク、キーン!サクサク、キーン!デートね(笑)
2008年09月16日 01:12
にゃはは(=^o^=)光さんを見て、智成さんは早速、男性ファッション雑誌でお勉強なの?やることが可愛いぞ…。
竜さんは、光さんの…ら…のせいで大変だよね。それを拝めた竜さんが、個人的にはすっごく羨ましいんですけども…。
竜さんと智さんのやりとりも面白いね。智さん…「どこだ、どこに来たー!?」って…天然さんっぽい。そんな顔して幽霊が怖いんだ。やっぱなんか可愛いなぁ…(笑)
2008年09月16日 06:12
ありがとう!

サークル参加してね☆
Rain
2008年09月16日 22:08
チビにゃん★智成さん、いちいちやることおかしいでしょ?でも本人はマヂメなんだよね。人って滑稽だよね。
それでもいいんだよ~♪って、そんなゆるさ、温かさが伝わる物語にしたいです。あ、もちろんお得意のドキドキハラハラドロドロ(笑)も忘れないよ(^O^)

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