Peace!61

光助はスニーカーを拾いあげると、砂をはたき落とし、ブランコに乗ったままの竜次の足下に置いた。


「……光…さん?」
竜次は驚いた顔を見せた。

「…隣、いい?」
「あ…うん…」
光助は竜次の隣のブランコに座った。腰をおろした板は思ったより小さく、不安定に揺れる。地面に足を着くと、そんなに長くない足なのに折り曲げた膝が邪魔になった。

「ひょっとして光さん……俺に電話…?」
「した」
「えっ?ほんと?」
竜次はあわてて着信履歴を確認していた。

「あっ…これ、ひょっとして、そう?」
由美という名前の下に、光助の番号が記載されていた。

「そう、それ」
やはりさっきの着信は彼女からだったようだ。しかし、竜次が電話に出ていた様子はない。つまり……そういうことなのだろう。

「……え?…でも鳴らなかったよ?」
「おれの番号、登録してないでしょ?」
「あっ………!え?でも、それで、よくわかったね、ここ?」
「電波、キャッチした」
「電波?」
「そう、竜さんから発信される電波」
「GPS?」
そういう意味ではないのだが、それを説明するのは照れ臭いので、そういうことにしておいた。
「……そうともいう」
「人間ってさぁ……すごい道具を作るよね」
「な」
「そのうち瞬間移動できる道具も作っちゃうのかな?」
「どこでもドアみたいな?」
「どこでもドア……あれ、いいよね」
「いいよな。ドアを開けたら、すぐに行きたい場所、だもんな」
「それがあったらさぁ……いつだって逢いに行けたのに……」
竜次の大きな瞳がみるみるうちに潤んできた。と、急に彼はくすんだ夜空を見上げた。

「そこが、宇宙の果てでも……さ」

光助にはそれが涙をこぼさないための仕草であることがわかった。

「でも、しょうがねぇ…じゃん……だって、まだ、ないんだもん……どこでもドア」

仰向けたのどが激しく上下している。息苦しくなったのか、竜次は大きく息を吐くと、今度は俯いた。ブランコを握っている手の位置よりも下にある彼の頭や肩が小さく震えている。

光助は立ち上がり、竜次の後ろへとまわった。
「竜さん……」
「…………」
「全部、出しちゃえよ」
「………」
「誰も見てねーし、聞いてねーから」
「………」
「おれのことは……そう……仏像かなんかだと思ってさ?」
「………」
「な?」

光助はそういうと、去年の春に旅行先で見た仏像のイメージを浮かべ、竜次の後ろで両手を合わせた。

この記事へのコメント

愛戦士桜
2009年07月23日 09:58
コースケ、「聖おにいさん」になるの図(爆)
リューちゃん…やっぱ泣けちゃったかぁ…
その涙はなんだかんだ理由をつけて会わなかった自分を後悔している涙?それとも……なんで「どこでもドア」がねーんだよていう怒りの涙?…なわけはないよね
えーい!泣いて泣いて泣いてその涙を明日への自分へのはなむけにするんだ!!!!
2009年07月23日 23:37
そうそう…竜さん、我慢しないで泣いちゃいなよ
竜さんばかりが悪いんじゃないような気がするわ。
由美ちゃんだって、竜さんに会いに行こうとはしなかったのかな。竜さんが来てくれることばっかりを期待しないで、自分から逢いに行っても良かったのにさ…。竜さんに黙ってて、他の人に心移りしちゃうってのも…やっぱちょっと酷いなと思っちゃう…
どうしても由美ちゃんより竜さんに肩入れしちゃうなぁ~(笑)
光さんが両手を合わせて立ってると…阿修羅っぽい…黙って立ってるだけで神々しく感じる(笑)
Rain
2009年07月24日 21:31
愛戦士桜★いろんな想いが複雑にからみあって涙になっちゃった?(←あ!ごまかした?)聖★おにいさん(笑)イメージしました。Tシャツにデニムにスニーカーだけど、苦しみから救ってくれる的な?何かを求めるわけじゃないけれど、聞いてくれる相手がいるという前提で、自分の中に溜まったものを出すと、不思議なことに楽になる。気持ちの整理がつくことあるよね。それには近過ぎず遠過ぎずの絶妙な距離が必要だよね。今、このふたり、ちょうどいい距離なのかも…。
Rain
2009年07月24日 21:32
チビにゃん★ケンカ両成敗っていうじゃない。(ん?ちょっと違う?)どちらかが一方的に悪いなんて言えないよね。でもどうせ別れるなら、思いを残さず、きれいにサヨナラしたいものだわ。ここはどうなるんだろうか…(あ、それは私次第か?)うん。初稿には「阿修羅のように手を合わせ…」と書きましたが、あえて消しました。読む人のイメージにまかせてみようかなって。桜さんは聖★おにいさんをイメージしてくれたしね♪限定しない…そういうのも楽しいかな~って。

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