Peace!57

迷路みたいな地下を歩き、いくつか電車を乗り継いで、由美の住む街の駅へと到着した。


以前に来たときも思ったが、今日はその時以上に、人が多いように感じられる。
「やっぱすごいね、東京って」
「そーぉ?」
「だっていつも人がいっぱいじゃん。毎日がお祭りみたいだよね」
「………竜さん」
「ん?」
「おれ、やっぱ、つっこんだ方がいい?」
「?」
光助の指さす方向を見ると、駅前のメイン通りが歩行者天国になっており、金魚すくい、かき氷、焼きそばと、祭りに欠かせないお決まりの屋台が並んでいた。

「!?」

どうやら今日はこの商店街のお祭りだったようだ。

「いや~でも、いいね~。日本の夏だよね~」
光助の興味はその屋台の並ぶ商店街へ向かっているようで、すでに彼の体はそちらへ動き出していた。
「ちょちょちょちょ!光さんっ!由美ん家、そっちじゃなくて、あっちだから」
「は?何、おれにそこまでついて来いってゆーの?」
「え!?ついて来てくれないの?」
「おれ、行ってどーすんのよ?」
「行こうっていったの光さんでしょっ!?」
「でも行くって決めたのは竜さんでしょ?」
「う……ん…?」
「それにさーどーせ、泊っちゃうんでしょ~?」
「……そんなことある………か…も?」
「あったら、泊っちゃうんでしょ~?」
うん…」
「そしたらおれ、お邪魔でしょ!でしょ?でしょ?でしょ!?」
「でも、もし、もしも、由美がいなかったら…?」
「待ってれば?」
「はぁ!?」
「せっかくきたんだもん、逢わずに帰るのもったないでしょ?」
「そーだけど…でも…だって…えー?俺ひとりで待つの?」
「じゃぁ…30分おきに竜さんの携帯鳴らす。で、竜さんが出なかったら、うまく行ったと思って、おれ、帰るから」
「帰るって…だって、もううちに帰る電車もバスも出てないよ?」
「ここは東京だよ?ひと晩くらい、どこでだって時間つぶせるって」
「…………」
「大丈夫だって。おれのことなら、心配いらないって」

いや、あんたのことじゃなくて。
もしも、ずっと待っていても帰ってこなかったら、もっとダメージ強くなると思うし。
そもそも帰りを待っているなんて、なんか、そーいうの…かっこ悪いような気がするし。

ここまで来たことは来たけれど……どうしよう…。

「竜さんっ!」

と、光助がいきなり竜次の両肩を両手でつかみ、ぐいっと顔を近づけた。

「????」
「いいか。しっかりその目と、耳と、下半身で愛を確かめてこいっ!」
「はっ、はいっ!」
「よしっ!行けっ!」

そしてくるりと竜次を進むべき道へ向けると背中をぽんと叩いた。

なんか、変なこと言われたような気がしたけれど……光助らしい、勢いのつけ方だなと竜次は思った。



賑やかな通りとは反対の道を歩く。小さな公園を通り過ぎて少し行くと、彼女の住んでいる薄いグリーンの壁の二階建てのアパートがある。オートロックのマンションじゃないことを心配したけれど、こういう風に急に尋ねるときは、都合がいい。通りに面した部屋のカーテンは閉めてあったが、灯りがついているのがわかった。竜次はほっとしたと同時に、胸が急速に早く鳴るのを感じた。

落ち着け、落ち着けと、呪文のように唱えながら、ゆっくり階段を上り、二階の一番奥の部屋のドアの前まできた。あとはチャイムを鳴らすだけのところへきて、迷いが出た。

光助はいきなり行って、驚かせろと言ったけれど、やっぱり、自分にそれは出来ない。
竜次は携帯を取り出すと電話をかけた。

彼女は出なかった。

この時間だ。ひょっとしたら、お風呂に入っているのかもしれない。

どこかで時間をつぶして、もう一度訪ねることにしよう。

竜次はゆっくりと階段を降り、来た道を引き返した。
引き返す途中、彼女から電話がこないだろうか?
あるいは、ふっと奇跡的にドアが開かないだろうかと、何度か振り返ってみた。


でも、何もなかった。



この記事へのコメント

SHINE
2009年07月05日 16:52
・・・・下半身で・・・って。
あははは・・・。さすが、光さんの言いそうな言葉だわ。

竜さんに、これから待ち受ける現実。
はぁ~~どうなるの?どうなっちゃうの?
って、私が興奮して、どうするんでしょう・・・。
愛戦士桜
2009年07月05日 22:47
下半身に突っ込むのはおいとくとして(笑)
部屋に明かりがついているのに携帯に出なかった恋人…ドアの前でRainにスン止めされた~o(><)oまたしてもヘビの生殺し~むきー(ToT)
チビにゃん
2009年07月06日 21:36
えっ?!竜さん…携帯に出ないからって、そこまで来といて引き返すのぉ??あぁ~なんてじれった~いそんなんで由美ちゃんに逢えるのかなぁ…光さんがさ、ここまで背中押してくれたんだからさ、頑張れっ!!何があったとしてもっ!
Rain
2009年07月06日 22:21
SHINE★すいません(恥)さらっと下ネタに走ってしまいました。でも実はこの先、けっこーいろいろ出てきます(笑)チャンネルを回したくなる展開かもしれないけれど(何じゃいそれは?)ここを描かないと先にゆけないし、登場人物たちも成長しないということで。がんばるよ(*^^)v
Rain
2009年07月06日 22:23
愛戦士桜★得意の焦らしプレイ(笑)部屋に明かりがついているからといって、そこに居るとは限らないよね~。
留守だとわかると泥棒に入られるワザと点けているって話、聞いたことない?人によってはTVも点けて外出するらしいよ。って、物語には全然関係ない話(笑)
Rain
2009年07月06日 22:28
チビにゃん★そのあともうひと押し!が出来ないのが、
この男なんだよね~。優柔不断というか…自己防衛本能が強いというか…。草食系男子ってそんな感じかも?
そう!結局は背中を押されて、流されて、きちゃったでしょ?ふふふーん♪そこんとこがポイントなのだ。

この記事へのトラックバック