Peace!58

竜次の背中が見えなくなってしまってから、光助は歩きだした。

本当のことを言うとこんな風に人がたくさん集まる場所というのは苦手なのだが、三十分経過したら連絡を入れるという約束もあったし、やっぱりいろいろと心配だったので、しばらく、この商店街の祭りを楽しんでゆくことにした。
目の保養が出来たらラッキー、意気投合して一緒に過ごせたら儲けもの。と、道行く人間を観察してみたものの、なかなか光助の興味を惹くような人物はいなかった。

「そりゃ、そーだよな」

求めてしまうのは、あの人を感じさせるような人。
からだ全体から、独特の色香を漂わせている人。
そんな人が他にいるわけ…………。

「って、ダメダメダメダメっ!それは絶対にダメっ!」

イケナイことを考えている自分に気づいた光助は頭を冷やそうと、かき氷を売っている屋台に向って歩き出した。

「わっ!」
「きゃっ!」

浴衣姿の女性と肩がぶつかってしまった。その拍子に彼女の手にあったかき氷がこぼれ、光助の胸にかかってしまった。
「ごめんっ!大丈夫だった?怪我ない?」
「私は大丈夫だけど、あぁっ、ごめんなさいっ」
女性はあわてて小さなバッグを開け、中からハンカチを取り出した。と、バッグの中から携帯電話の着信音が聞こえてきた。若い女性にしては珍しい無機質な音だった。
「どうしよう、濡れたままじゃ、冷たいですよね?」
「あぁ、気にしないで下さい。そのうち乾きますから。それより、電話、鳴っていますよ」
「……気にしないで下さい。そのうち停まりますから」
くっきりとした二重が印象的な、きれいな女性だった。そのうえ機転の効いた答え方は彼女が聡明であることをあらわした。こういう子と話をすると、楽しいだろうな……あぁ、でも、たぶん、こういう子にはちゃんと彼氏もいるんだろうな……こういう子を落とすなんて、いったいどんな男なんだろうな…………と得意の妄想をふくらませていると、

「どうした?」

人混みをかきわけて、背の高い男性がやってきた。

「?」

光助はその少女漫画にでも出てきそうな甘い顔立ちの男性をどこかで見たような気がした。今どきのイケメン顔だから、雑誌で見たタレントと見間違えているのかもしれない。まぁ、どちらにしても光助が覚えているほどだから、なかなかの男前であることは確かだ。

「あ、潤ちゃん、ちょっとぶつかっちゃって…」
「大丈夫?」

潤ちゃんと呼ばれた男性は彼女の体に手を触れ、怪我がなかったかを確かめていた。

「………」

ふたりの間に漂う空気はもちろん、その手つきで、このふたりの仲がどの程度のものかを光助は即座に理解した。
「じゃぁね」
と、光助が立ち去ろうとすると
「ちょっと待てよ」
腕を掴まれた。
「ぶつかっといて、じゃぁねはないだろ?」
「は?」
「は?じゃねぇよ。お前、わざと由美にぶつかったんじゃねーの?」
「ちょっと潤ちゃん、やめてよ」

なるほど。彼女の前でいいところを見せたいのだろう。おれの体が華奢で顔も女みたいで、弱々しいから、これなら勝てると思ったわけだ。あーあ、かっこいいのは顔だけだったか。残念!

「ナンパしようと思ってぶつかったんじゃねーの?」
祭りに喧嘩は付き物というが、こんなくだらないことで騒ぎを起こすのは野暮ってものだ。

「そんなに心配なら、首輪でもつけて、引っ張って歩けよ」
光助は低い声で冷たく言い放ち、つかまれた手を大きく開き、護身術を使って男の手からするりと抜けた。

「!?」
「それにさ、俺、どちらかというと、彼女よりもあんたの方がタイプなんだよね~♪」
と、冗談めかして言うと、美形カップルはもう相手にするだけ時間の無駄だと思ったのか、そのまま行ってしまった。

ぐぁぁぁ!気分悪ぃ---!
何かすっきり、さっぱりするものでも飲んで洗い流そう!
光助は駅前に戻るとファーストフード店に入り、氷のたくさん入ったコーラを頼み、一気に飲んだ。


おぉぉぉぉぉぉ!この冷たさ!喉を突き刺していく痛みがーたまらん!


と、その刺激が効いたのか?突然、光助の脳で何かが結びついた。


二番目!


そう!さっきのあの男。竜次の部屋にあった、彼の高校時代のクラス写真で光助がそこに写っている中で、二番目に男前だと思った顔の男と同じだった。

そして彼はあの浴衣を着た彼女の名前を


由美。


と、呼んだ。


マジかよーーーーっ!!!???

この記事へのコメント

愛戦士桜
2009年07月09日 21:25
潤ちゃん!!(・∀・)それは顔の濃い~…?(笑)
由美ちゃん…ああ…(≧□≦)
SHINE
2009年07月09日 23:27
あわわわ・・・・。
やはり、こういう展開になっちゃう?
潤ちゃん!私も、桜の想像するとおりの顔が思い浮かんだよぉ!!
由美ちゃんの心は、本当に潤ちゃんにあるのかな?

この事実を竜さんより、先に知ってしまった光さん。
さて・・・どうする?どうなる?
あーーー。またまた、興奮してまうぅうう!!
チビにゃん
2009年07月10日 00:06
由美ちゃん、こんな所におったんかいなぁ。しかも、男前の潤ちゃんと一緒とは…由美ちゃんと潤ちゃんは恋人同士なのかねぇ?まぁ…少なくとも、光さんに食って掛かったところを見ると、潤ちゃんは由美ちゃんが好きそうだけど…。はてさて…由美ちゃんの気持ちはどっちにあるのやら
そして…気付いた光さんはどうするんだろ?

”求めてしまうのは、あの人を感じさせるような人。”ってのも…何気に気になったわぁ~。光さんの心の中に居る…あの人って誰だろぉぉぉ…。
愛戦士桜
2009年07月10日 11:24
昨日は携帯からだったので あらためてまたきたよー
潤ちゃん、リューちゃんのクラスメイトだったのか…赤の他人のほうがまだ なんぼかマシだったよね
しかし、コースケすごいねー、ちょっと見ただけの顔を覚えてるなんて(よっぽど濃かった?)爆
さぁ!コースケどーする?君が思うより事態は深刻な色を濃くしてきたようだよ、そうまるで今日の空のように…(うまい!)爆
いまごろさ、リューちゃんは母犬とはぐれた仔犬みたいに途方にくれてるよね…。

チビにゃんと同じく 「あの人」って誰ー!!!!だれだれだれーーーーー!!!!←結局ごねてる
Rain
2009年07月11日 15:52
SHINE★恋愛のもつれって、それが原因で地球が滅亡するわけじゃないけれど、当人たちにとってはそれこそ天変地異クラスの一大事だもんね。それをリアルに感じさせるために、どうしたらいいか?いろいろ考えてこのような展開になりました。多少の効果はあったのかな?恋に年齢は関係ないけれど、登場人物たちは二十歳そこそこ。揺れ方も大きいかな~と…。
Rain
2009年07月11日 15:55
チビにゃん★准にしようか潤にしようか迷ったのだけれど「ヒミツの嵐ちゃん」で「彼女が男性とふたりで歩いているのを目撃しました。あなたならどうする?」な質問を嵐がされていて回答した潤ちゃんにブーイングの嵐(笑)ヒール的存在もいけるかな~?と思いました。『東京編第一部』(いつからそんなサブタイトルが!?)どんな展開で、どんな結末が待っているのか?そしてこの物語の行く先は!?書いているのはRainなので笑ってやって下さい♪
Rain
2009年07月11日 15:56
愛戦士桜★竜次の部屋にクラス写真が置いてあるからね。光さん、暇つぶしにそれを見ていたらしいよ(笑)せめて見知らぬ人ならよかった…それでも十分ドラマになるけれど、こうした方がよりドラマチックでしょ?いわゆる昼ドラ的展開にもっていきました(笑)
あの人…とは誰だ!?そして彼女を待っているはずの竜次!どうする?どうなる!?って、実はそんなに煽るほどでもない展開なんだけどね(←ここが深夜枠的?)
Rain
2009年07月11日 15:58
ドーモトくんに「竜次が優しすぎるー!」のコメントをいただきました。そーね。そーだわね。

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