Peace!65

以前から薄々気付いてはいた。


自分がある事柄に対して同級生(男子)との間で共有する感覚というものを欠いているのではないか?

ということに。

一般的な男子中学生の関心事といえば、受験、部活、ゲーム、漫画、アニメ、女の子だろう。光助もほぼそれに準じていた。つもりだった。
だが同級生男子たちがテニス部女子のスコートからちらりと見えるものを目で追っているとき、光助は短パンでコートを走る男子テニス部主将の大腿筋を目で追っていた。
同級生男子たちが水着の女子の胸とお尻にあらぬ妄想を抱いているとき、光助は男性体育教師の厚い胸板と締まった腰…………に悶々としたものを抱いていた。

同級生男子たちの性的な興味の対象が女の子に向かっているのに対して、自分は同性に向かっている。

なんで?なんでだ?
まさか…ひょっとして…ほんとうは…おれ…





女だったりして!?



自分が他人とちょっと違うということに気付いてから、光助はどこにいても居心地の悪さを感じていた。特に学校はその最たるものだった。集団心理とでもいうのだろうか?ちょっとでも自分たちと異質であるものを見つけると、よってたかって排除にかかる。それに抵抗できるほど、そのころの光助は、まだ強くはなかった。

とにかく、この異質さに気付かれてはならないと光助は他人と距離をおくようにした。交わす言葉を最小限にし、話の輪に入っていても、聞くことに徹し、自ら口を開くことは極力抑えた。もちろん、それは女の子に対してもだ。光助の外見も手伝って同級生たちはそれを「女扱いに慣れている大人の男」と解釈した。その誤解は光助をほっとさせもしたが、哀しくもさせた。



結局、人は自分の見たいようにしか物事を見ないものなのだ。



そんなある日、光助の机の中に見慣れぬ布製のブックカバーがかけてある文庫本が入っていた。何だろうと手に取り、ぱらぱらとめくったとたん、光助に衝撃が走った。心臓が口から飛び出しそうなほど、勢いよく跳ねていた。
それは中高校生を主な読者対象としている文庫本でイラストがふんだんに挿入されていたのだが、その中の一枚は明らかに性描写だった。しかも、どう見ても、それは男性同士の行為を描いたものだ。


光助はすぐに本を閉じた。


なんだよ……これ……?
おれの頭の中、そのものじゃないか?
誰かが気付いている…?
それでこんなものを入れて、おれの反応を楽しんでいる!?

どうしよう!どうしよう!どうしよう!


と、体中を火のついた車が暴走している光助に、隣の席の女子生徒が声をかけてきた。
「上原……」
光助は内心の慌てぶりを感じさせないように、ことさらぶっきらぼうに答えた。
「……あ?」
「それ……」
「……これ?」
「……あたしの…なの」

!?

そういえばクラスメイトだった……と、思うくらい、目立たない大人しい部類のグループに属する子だった。おしゃれとか、化粧とか、恋だの愛だの、ましてや男子になんか全く興味のないように見える子が、こんなどエラい、どエロい本を読んでいるのか!?はぁぁぁ…人は見かけによらないって本当…。

と、自分のことを棚にあげて光助は思った。

「……C組の友達が机を間違えて、入れちゃったみたい…で…」
「あぁ……」
光助は自分の性癖が露見したのではないことに、ほっとしつつ、でもそれを表情に出さないようにして本を手渡した。
「……上原……これ、見た…よね…?」
実際、数ページめくったし、いくつかの過激な言葉が目にとびこんできてもいた。それを見ていないというのは、むしろ、わざとらしいと思ったので、光助は正直に答えた。
「見た」
「あっ、あのね、こ、これはあたしのじゃなくて、友達が面白いよ~って、貸してくれるっていうから…それじゃぁ読んでみようかなって…思っただけで…その…なんていうか…」
彼女の必死に弁解する姿、動揺している気持ちをひたすら隠そうとしている自分と重なって見えた。

哀れだった。

こんな姿、見たくない。光助は目を合わせないようにして答えた。

「見ただけだから」
「え?」
「名前があるかどうか見たってだけ」
「…上原…」
「次から、机、間違えんな、って言っとけ!」


そう言ったはずなのに……。


どういうわけか次の日から教科書や教材テキストや、推薦図書になりそうな小説だのが、毎日のように誤って入っていた。

それが寡黙な光助と口をきくための彼女たちの唯一の手段だったということに気づいたのは、卒業間近になってからだった。

だがその文庫本事件のおかげで、光助は自分以外にも自分と同じ性志向を持つ人間がいることを知ったのだった。

この記事へのコメント

チビにゃん
2009年08月18日 23:42
薄々…そうかなとも思ったけど…

光さん…そうだったのかぁぁぁ~~~(笑)
愛戦士桜
2009年08月19日 15:02
おおおおおお

…ウズウズしてきた(笑)←ど変態です変態で何が悪い

でも、本人にしてみたらその女子の攻撃はさぞかし苦痛だったろうね……暗いイメージのコースケ……なんか いいね←絶対おかしいよね(笑)
Rain
2009年08月19日 20:06
チビにゃん★だって書いてるの私だも~ん♪だけど私が書くから、それがメインにはならないという。にはま、あざといっちゃーあざといんだけどね(笑)BLファンには物足りなくて、そうでない方はちょっと苦笑いなところが私流(笑)
Rain
2009年08月19日 20:12
愛戦士桜★かっこいいけれど地味な彼がいつ、何がきっかけで、艶やかで妖しい花へと変貌を遂げたのか?ちょっと気になるでしょ~?さぁ~Rainお得意の変態物語はじまるよ~♪(半分冗談半分本気)
SHINE
2009年08月24日 18:39
うふふ・・・。最初から気付いてたよ・・・。
でもさ・・・からくりを言ったらご法度なわけだし。
だから、ずっと、私も光さんに同じく悶々としてた訳であります。(笑)
光さんは、ずいぶん苦しんでたんだね?

それにしても、これから、開花されちゃうのかな?
あんなことや、こんなこと・・・。←妄想中
お楽しみは、これからだねぇ♪
Rain
2009年08月24日 20:45
SHINE★だって描いてるの私だもんね♪どこかにその要素が入っている(笑)うん。苦しまない人はいないと思う。それ以前に彼は製造元(父)の顔も素性も知らないから余計にいろいろ自分の存在の所在なさを感じている。そういうこともテーマになっています♪

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