Peace!69

はじめまして~♪よろしくねっ♪

しばらく横一列に三人並んで腕を組んだまま歩いた。すれ違う人がみな何事かと振り返る。

そりゃぁ、そうだろう。

妖艶な顔立ちの姫と、武将顔の竜次、黙っていれば貴公子と言われた光助の三人だ。目立たないわけがない。
何かのパフォーマンスかと思ったのか、口笛を鳴らされたりもした。

だが光助も姫も無言で無表情のまま歩き続けた。そこに深い意味はない。その無意味なことを真面目にやっていることがおかしくて、楽しくて、たまらないのだ。かわいそうなのは竜次だ。わけもわからず外に連れ出され、夏の蒸し暑い夜だというのに、男ふたりにがっしりと両腕を組まれ、どこに行くかも知らされず、ひたすら歩かされているのだから。その不安がピークに達したのだろう。竜次は突然、歩みを止めた。

「おっとぉ~何っ!?」
「…竜さん?どした、気分悪い?」
「……………?」
「ん?なに?」
「…………?」
「なーにぃ?はっきりいってごらーん♪」
「ど・こ・行・く・のっ?」
「おぉ~♪いい声じゃーん♪」
「どこって……えっと…それは……」
そういえば決めていなかった。これから別の店に入って飲み直すというのも、なんとなく面倒だ。かといって、この状態の竜次を連れたまま、歩き続けるわけにもいかない。この後はどこか安いホテルにでも入って……と話そうとしたら、
「オレんちだよ~♪」
っと、姫がにこにこしながら、言った。

!?
「この坂をのぼりきったら、うち、見えてくるから。あと少し、がんばろうっ!」
「姫、それは…」
「させないよ」
「えっ?」
「ふたりっきりになんかさせないもんねぇ~♪」
「だーかーらー、違うっていうのに…もぉ…」
光助は竜次に背を向けて、小声で話しをはじめた。
「……姫、彼は…違うんだよ」
「違うって、なにが?」
「なにって…その…つまり…こっちじゃなくて、あっちの人なの」
「あっち?」
「だからぁ……彼が求めるのは、女の子、なの!」
「あぁ~、そっちのそっち~♪」
姫はぽん、とひとつ手を打った。どうやら、納得したようだ。そしてにこにこしながら、自己紹介をはじめた。
「はじめまして~♪姫田竜也でーす。よろしくねっ♪」
「…あ…はい…?」
「オレの友達」
「光さんのともだち?」
「そう!ともだち!なっ?」
「友達?」
「だろっ!?」
「……ま、友達といっても~、かなり長くて硬くて太くて深いところまで入りこんだ付き合いだけどね~♪」
「?????」
「姫っ!だからそーゆー誤解をまねくよーなこと言うんじゃねーっ!って言ってんだよっ!」
「光さん、誤解って?」
「なななな、なんでもないよっ!」
「……ひめ…だ…さん?」
「姫でいいよ♪」
「ひめ…?」
「な・ぁ・に・っ♪」
姫は首を横に傾け、「落ちない男はいない」とまで言われた笑顔を見せた。しかし竜次はその天使の微笑にもどうという反応を見せるわけでもなく、きちんと両手を体の脇につけ、深々と頭を下げた。
「はじめまして。香月竜次と申します」
「ひゃはははっ、反応がいちいち新鮮だね~!いいね~、リューちゃん♪」
「竜ちゃん……?」
「りゅうじくんだから、リューちゃん♪」
「竜ちゃんって…」
「え?」
「竜ちゃんてゆーなー!」
「えっ?何っ、どーしたの」
「姫っ!それNGっ!バツっ!」
竜次の彼女が彼のことをそう呼んでいた。それを思い出してしまったに違いない。
「いらねーよっ!」
「何?リューちゃ…竜次くん?どうしちゃったの?」
「あぁぁ、いや、これにはちょっとワケがあって」
「いらねーよ、女なんかー!」
「そーだー♪いぇーい!」
「姫っ!あおるなっ!」
「女なんか、大嫌っきらいだー!」
言うなり、竜次は目の前の坂をかけ上りはじめた。
「ちょっと竜さんっ!どこ行くのーっ!?」
「一緒じゃん、リューちゃんも」
「何が?」
「女いらなーい♪って、彼もこっち側の人間じゃ~ん♪」
「それは後で説明するから!追いかけるよっ!」
「ねぇねぇ、競争して、オレが勝ったら、チューしていい?」
「はぁっ!?」
「お先~っ♪」
「ま、マジかよっ!?」

姫の外見は華奢で色白で、着る服によっては女の子にしか見えないときもあるけれど、その実体は、わんぱく坊主がそのまま大人になったのかと思うほど疲れ知らず、学生の頃からボクシングジムに通っているため、体力は底無し。坂道をかけのぼるなんてこと、彼にとってはウォーミングアップ程度のものだ。

そんな奴に勝てるかーーーーっ!

でも負けられねーーー!

絶対に負けねー!

この記事へのコメント

SHINE
2009年09月15日 21:13
竜さんの今の心境だったら、この状況を正しく把握することは難しいね?
光さんのお友達である姫が、竜さんとは別世界の人と知ったとして・・・果たして、光さんがカミングアウトするかは分からないのだけど。
しばらくは、この面白い3人のなりゆきを見守るしかないですね?
Rain
2009年09月18日 13:38
SHINE★…しらふでも、この状況というかいろんなことを把握できるかどうか(笑)だから当然この状態では何にもわかってないし気づいてないだろーね。自分の悲しみで精いっぱいだもんね。きっとこの後はみんなが一番知りたかった話が聞けるのではないかと思います(*^^)v
それは北の大地から帰ってからね~♪

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