Peace!92

こんなときに!? ここで!?


「早く、出ろ」
伊織が静かだけど厳しい口調で言った。光助は何もかも正直に話そうと覚悟を決めて電話に出た。
「もしもし……」
「光助?」
「はい」
「うちに帰ったんじゃないの?」
「帰りました」
「帰った? じゃぁ、エリに会えたんだね?」
「………いいえ」
「どうして?」
「………いなかったから」
マスターが、あぁ…と小さい声をもらした。それだけのことなのに背中がぞくりとした。風呂からあがったばかりなのに、暖かい部屋に居るはずなのに体が震えていた。
「光助………」
「はい……」
「……お母さん………」

オカーサン、ナクナッタ。

その音を受け入れることが出来なかった。
その言葉の意味を理解したくなかった。

「コースケ? キコエテイル?」
「なんで…」
「ン?」
「なんでマスター、エリさんの名前、知っているの?」
「エ?」
「なんで、エリさんの名前、知っているの?」
「ソノセツメイハアト、トニカク、スグニ……」
マスターがまだ何かしゃべっている。でも何を言っているのかわからない。理解できない。したくない。ぼーっと立っていると伊織が光助の手から携帯電話を外した。
「あぁ……オレ……うん、横にいるよ……いや……たぶん……今の聴こえていないと思う………オレが連れて行きますから……はい、わかります…じゃぁ、あとで……」
そして電話を切ると伊織は大きなスーツケースの中から黒いデニムを取り出し、光助に差し出した。
「履けよ」
「?」
「そのままじゃ外に出られないだろ」
光助は首を振った。ここから出たらそれを受け入れなくてはいけない。

いやだ。行きたくない。

光助はうずくまって首を振った。


すると伊織は何を思ったかいきなり光助を床に押し倒し、両足首をつかんだ。

はぁ!?
こんなときに何考ええてんだよ、この人!?
アタマ、おかしいんじゃないの!?

「何すんだよっ!」
「するこたぁ、ひとつに決まってんだろ!」
「離せっ!」
「やだね」
そう言うと光助の足を開いた。
「おぉ~いいながめだ」
「やめろー!!!!!」
「じゃぁ、さっさと服を着ろ!!」
デニムを再び光助に押し付けた。
「そういう姿でウロウロされるとなぁムラムラするんだよ!このフェロモン垂れ流し小僧が!」
「フェ……っ!?」
「お?してくれるのか?」
「え………エロじじいっ!」
「なんとでもいえ!ほら、あと10数えるうちに履け!」
「ぃやだっ!」
デニムを床に叩きつけた。

「お前なぁ………いーかげんにしねーと、ほんとにパンツ下げるぞ!ごらぁ! 」

迫力に押され、光助は慌ててデニムを履いた。すぐに靴下を、その次はカーディガン、そしてコートを手渡された。あっと言う間に着替えは済み、サイズは全く合っていないものの、なんとか外に出られる姿になった。
「よし、そのままの姿で7分待ってろ。いいか、勝手に脱ぐなよ!」
「脱がないよっ!」

そして5分後、光助は伊織の車の助手席に乗って、師走の街を走っていた。







こっそり再開(笑) ちまちま更新(笑)

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