龍の涙・鏡の血52 怪の章(11)
と、突然、斑狩人(はんたー)が叫び声を上げた。
奴の片方の目に矢が刺さっていた。あっと思う間もなく、次の矢が奴の脇腹に刺さった。
一体、この矢はどこから? そして誰が?
さきほどの黒装束の集団とは腕が違う。的を狙う技術はもちろんのこと、粘膜に覆われたような皮膚に矢を刺すということは、そこに相当な速さと重さがかかっている証だ。そして三本目の矢が反対側の脇腹に刺さったとき、ようやくミラーはその弓の名手を確認した。
「剛龍!?」
剛龍は巨大な鳥のようなものに跨り、空中で弓を構えていた。
「ミラー!走れ!」
ミラーは剛龍に言われたとおり、駆け出した。その後から、剛龍をのせた翼を持った獣が追ってきた。すぐに剛龍は追いつき、ミラーと並走した。
「ミラー!」
剛龍が手を差出した。ミラーがその手を掴むと、剛龍は彼を引き上げ、不思議な生き物の背中に乗せた。
「乗ったか!?」
「乗った!おい、これ、手綱はどこだ?」
「そんなもんあるかい!」
「なら、どこにつかまればいい?」
「ここ!」
剛龍はミラーの腕を自分の腰にまわした。
「しっかりつかまっとれよー!」
剛龍の声に不思議な生き物が反応し、上空を目指して飛んだ。
「飛んでいる……?俺は今、空を飛んでいるのか?」
「そういうことやな」
「……な……なんなんだ?この生き物は?」
「艶鳥蹴狗(えんどりけりい)…この国にしか生息しない、生息できない生き物や」
「艶鳥蹴狗(えんどりけりい)……?」
ミラーはわずかの間、斑狩人のことを忘れていた。空を飛ぶという初めての経験に体中が緊張し、興奮していた。こうして上から見ると、森の緑は一色ではないことがよくわかる。そのもちの中には小さな泉が点在している。森に沿って流れる川、自分はここを下って、この国へ辿りついたのだ……。
「ミラー!おい、ミラー!?」
「あ、あぁ…何?」
「何?や、あらへんがな!この傷、あいつらにやられたんか!?」
剛龍はミラーの腕に巻かれた、血染めの布を見て言った。
「あいつら……?」
「……いただろう?黒装束の者が…」
「あぁ、あいつらか…いったい、何者なんだ奴ら?」
「影と呼ばれている者たちだろう……」
「影?」
「……公には出来ない陰の仕事を請け負う集団だ」
「あぁ…スパイのようなものか……どこの国にもそういうものがあるのだな…」
「ミラー…」
「奴らについての話は後で聞く。今は斑狩人のことに集中しよう」
「おいっ、まだやる気かいっ!?」
「まだ留めを刺していないんだ。手負いの獅子ほど恐ろしいものはないというからな…あいつも今、まさにそういう状況だろう。早く仕留めなければ…もっと危険なことに…」
「それよりまずその傷の手当が先やろうが!」
「こんなもん傷のうちに入るかい!早く森に戻れよ!戻れーっ!最後までやらせろー!!でなきゃ、ここで暴れるぞ!」
「やめやめやめーいっ!わかったから!ここで暴れるな!落ちるぞ!」
剛龍は艶鳥蹴狗をゆっくりと旋回させ、再び、森の中へ向かった。
木々の間を縫うように艶鳥蹴狗は飛んだ。剛龍とミラーは斑狩人の姿を探した。
「日が暮れる前に片付けたいんやけどな……」
「傷を負っているから、そんなに遠くまでは行けないはずだ…が…?あっ!?」
「おったか!?」
「蛇良!?」
ふたりの視線の先に木から木へと飛び移ってゆく蛇良の姿が見えた。そして彼の追っている先には、四足歩行で走る斑狩人(はんたー)がいた。
「蛇良ぁぁぁっ!」
剛龍が叫ぶと蛇良はちらりとこちらを見た。そして剛龍の後ろにミラーがいるのを確認すると、こちらに向かって指を出し、まず自分を差し示したあと、それを急降下させた。
「なんの合図や…?あれは?」
「あいつ……囮になるつもりだ!」
「囮!?」
奴の片方の目に矢が刺さっていた。あっと思う間もなく、次の矢が奴の脇腹に刺さった。
一体、この矢はどこから? そして誰が?
さきほどの黒装束の集団とは腕が違う。的を狙う技術はもちろんのこと、粘膜に覆われたような皮膚に矢を刺すということは、そこに相当な速さと重さがかかっている証だ。そして三本目の矢が反対側の脇腹に刺さったとき、ようやくミラーはその弓の名手を確認した。
「剛龍!?」
剛龍は巨大な鳥のようなものに跨り、空中で弓を構えていた。
「ミラー!走れ!」
ミラーは剛龍に言われたとおり、駆け出した。その後から、剛龍をのせた翼を持った獣が追ってきた。すぐに剛龍は追いつき、ミラーと並走した。
「ミラー!」
剛龍が手を差出した。ミラーがその手を掴むと、剛龍は彼を引き上げ、不思議な生き物の背中に乗せた。
「乗ったか!?」
「乗った!おい、これ、手綱はどこだ?」
「そんなもんあるかい!」
「なら、どこにつかまればいい?」
「ここ!」
剛龍はミラーの腕を自分の腰にまわした。
「しっかりつかまっとれよー!」
剛龍の声に不思議な生き物が反応し、上空を目指して飛んだ。
「飛んでいる……?俺は今、空を飛んでいるのか?」
「そういうことやな」
「……な……なんなんだ?この生き物は?」
「艶鳥蹴狗(えんどりけりい)…この国にしか生息しない、生息できない生き物や」
「艶鳥蹴狗(えんどりけりい)……?」
ミラーはわずかの間、斑狩人のことを忘れていた。空を飛ぶという初めての経験に体中が緊張し、興奮していた。こうして上から見ると、森の緑は一色ではないことがよくわかる。そのもちの中には小さな泉が点在している。森に沿って流れる川、自分はここを下って、この国へ辿りついたのだ……。
「ミラー!おい、ミラー!?」
「あ、あぁ…何?」
「何?や、あらへんがな!この傷、あいつらにやられたんか!?」
剛龍はミラーの腕に巻かれた、血染めの布を見て言った。
「あいつら……?」
「……いただろう?黒装束の者が…」
「あぁ、あいつらか…いったい、何者なんだ奴ら?」
「影と呼ばれている者たちだろう……」
「影?」
「……公には出来ない陰の仕事を請け負う集団だ」
「あぁ…スパイのようなものか……どこの国にもそういうものがあるのだな…」
「ミラー…」
「奴らについての話は後で聞く。今は斑狩人のことに集中しよう」
「おいっ、まだやる気かいっ!?」
「まだ留めを刺していないんだ。手負いの獅子ほど恐ろしいものはないというからな…あいつも今、まさにそういう状況だろう。早く仕留めなければ…もっと危険なことに…」
「それよりまずその傷の手当が先やろうが!」
「こんなもん傷のうちに入るかい!早く森に戻れよ!戻れーっ!最後までやらせろー!!でなきゃ、ここで暴れるぞ!」
「やめやめやめーいっ!わかったから!ここで暴れるな!落ちるぞ!」
剛龍は艶鳥蹴狗をゆっくりと旋回させ、再び、森の中へ向かった。
木々の間を縫うように艶鳥蹴狗は飛んだ。剛龍とミラーは斑狩人の姿を探した。
「日が暮れる前に片付けたいんやけどな……」
「傷を負っているから、そんなに遠くまでは行けないはずだ…が…?あっ!?」
「おったか!?」
「蛇良!?」
ふたりの視線の先に木から木へと飛び移ってゆく蛇良の姿が見えた。そして彼の追っている先には、四足歩行で走る斑狩人(はんたー)がいた。
「蛇良ぁぁぁっ!」
剛龍が叫ぶと蛇良はちらりとこちらを見た。そして剛龍の後ろにミラーがいるのを確認すると、こちらに向かって指を出し、まず自分を差し示したあと、それを急降下させた。
「なんの合図や…?あれは?」
「あいつ……囮になるつもりだ!」
「囮!?」
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