龍の涙・鏡の血61 血の章(3)

それは、ほんの一瞬の出来事であった。

イクタ准将の「撃て!」の命令前に一発の銃声が響いた。

と、銃を構えていた兵士、四人がミラーの眼の前で、ほぼ同時に倒れていった。

お前!?何をっ!?

そしてもう一度、銃声が響き、イクタ准将が落馬した。

四人の兵士はみな、こめかみを打ち抜かれていた。イクタ准将は額の真ん中に銃弾の後があった。マーティは銃を構えたまま、四人の兵士とイクタ准将が息絶えているのを確認すると、ミラーの元へと向かった。

「ミラー将軍。数々のご無礼、お許し下さい」

★※▲◇(-_-メ)!?(@_@)☆彡Φ!!!

「それもこれも、すべてあなたを助けるためです。どうか、どうか、ひと言、許すと……」

!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/!!

「……?……あっ!そっか!た、ただいま!」
マーティ少佐は大慌てでミラーの縄をほどき、口を覆っていた布を取り外した。
「……ま、マーティ……少佐!」
「はっ!」
「見事な働き、恐れいった!感謝する!」
「ありがたきお言葉にございます!」
マーティはその大きな瞳をうるませながら、笑顔を見せた。


野外演習でミラーが忽然と姿を消した。軍は一時、騒然となった。マーティら新兵たちの間には、亡命、誘拐、暗殺など、様々な憶測が流れた。そんな中、軍がまず取った行動は、ミラー失踪についての緘口令だった。彼が不在であることは国の民はもちろん、諸外国にも秘密にするという命令が降された。
「私にはそれが不思議でなりませんでした。まず、最初にするべき事は、ミラー将軍の捜索ではないのですか?」
「……マーティ少佐。政治とはそういうものなのだ」
国を治めるべき人間に不測の事態が起きたとき、次の政権の準備が整うまで、そのような発令を出し、時間稼ぎをする。そうしなければ、国の不安をあおり、その隙を諸外国に突かれてしまう。危機管理対策のひとつとして重臣たちは、それを実行しただけだ。
「私が言いたいのは、そういうことではございません!軍…いえ…国があなたの捜索活動をただの一度も行わなかったということです」
「ただの一度も…か……つまりそれは、私を見捨てた…と、いうことか…」
「……あなたが失踪した時点で、あなたは死んだ人間として扱われたのです」
それから重臣たちは対外的には何事もなく振舞うその裏で、政権交代に向け、あれこれと大きく動いた。重臣のほとんどは元摂政の息のかかったものになり、当然、軍の総指揮権もトーヤ将軍へとうつった。
「トーヤが将軍?……そ、それでは父上は?国王はどうされた?」
マーティ少佐は目を伏せた。長い睫毛がふるえていた。
「……どう…した?父上はどうされた!?」
「おかくれに…なりました…」
ミラーの姿が消えたとわかったとたん、廃人同様となり、そのような姿を民に見せられぬと、摂政がどこかへ幽閉してしまったという。そこでひっそりと息を引き取ったようだ。
「嗚呼!」
ミラーはがくりと頭を垂れた。自分が龍の国で夢のような、心地よい暮らしにひたっている間、父は悲しみ、苦しみ、たったひとりで逝ってしまった。逝かせてしまった!

なぜ、なぜもっと早く戻らなかった!このばか者が!!!

「そんなときです。あなたが生存しているという知らせがとびこんできたのは…」
いよいよ新政権誕生というときに、ミラー王子が龍の国というところで生存しているという知らせが、東の国の使者からもたらされた。だが、それを知っているのは、摂政とごく一部の重臣と、軍の特命部隊といわれているものだけだった。
「特命部隊?」
「えぇ…軍の中でも、ある目的のために、特に秀でた能力を持つ者によってつくられた部隊です。そこに転がっている連中は、みなそうです」
「では…マーティ少佐も?」
「はい…私も、その部隊におりました」

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