テーマ:龍の涙・鏡の血

龍の涙・鏡の血50 怪の章(9)

ミラーは森の入り口へとやってきた。 とたんにシルバーの足が停まった。ミラーはドラゴンの口に差し掛かったときのルビーのことを思い出した。状況はあのときと全く同じだ。ミラーは迷った。とどまるべきか、それとも……。 ミラーは自分の運に賭けることにした。 そしてシルバーを森の入り口に残し、ひとりで森の中へと入って行った。 …
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龍の涙・鏡の血49 怪の章(8)

剛龍はこの国の歴史や、風土について書かれた本を持って、ミラーのもとを訪ねた。 この国のことをもっと知りたいという彼の希望にこたえるため、毎日、こうして本を届けることが日課となっていた。剛龍はいつものように、外務大臣にミラーの部屋を訪れる手続きを取り、彼の元へと向かった。警護のものに外務大臣名の書類を見せ、確認の印を待つ間に部屋…
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龍の涙・鏡の血48 怪の章(7)

ミラーは密かに、だが着々と戦いへの準備を整えていた。 「東の国の使者を経由して龍の国が鏡の国からもらった返事は『書面、確かに預かった。後ほど、迎えを寄越す。その件についてはまた追って遣いを出す』と、いうものだった。やはり、鏡の国は最初、ミラーが行方知れずになっていることを隠していたそうだ。だが、ミラー直筆の書面、血判を見てよう…
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龍の涙・鏡の血47 怪の章(6)

「斑狩人(はんたー)を退治するってぇ!?」 蛇良が素っ頓狂な声をあげた。 「しっ!声が大きい!」 「あっ…いけねっ…」 完全復活を遂げたミラーは、すでに病室を出ていた。今は城の中の来賓室で生活しているのだが、そこにはたとえ剛龍でも、外務大臣の許可なく入ることは出来なかった。部屋の前では常に警備兵が立ち、眼を光らせ…
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龍の涙・鏡の血46 怪の章(5)

剛龍は水面を蹴りながら、蛇良たちの待つ河原へ向かった。 抱えていたミラーをおろすと、すぐに大きな声で名前を呼んだ。 「ミラー!ミラー!聞こえるか!? 」 「おいこら、男前王子!起きろ!起きろってんだよ! 」 ミラーは蛇良の呼びかけにも反応しなかった。剛龍はミラーに跨り、服を切り裂くと胸部に耳を当てた。微かだが、そ…
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龍の涙・鏡の血45 怪の章(4)

今日、はじめてのアタリが来た。 初心者の竿ほど食いつきがいい。と、いうのも、魚の方が「この竿なら釣り上げられることはない」と、わかっているからだ。 「ど、ど、ど、どうすればいいっ?」 ミラーの釣り糸は右へ左へと勢いよく動く。これは相当活きのいい獲物のようだ。 「とにかくしっかり握って!」 ミラーは立ちあがり、体で支えた…
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龍の涙・鏡の血44 怪の章(3)

おだやかな時間が過ぎていた。 生きて再び祖国の地を踏めるという喜びはたとえようがない。だが国へ戻れば、また公務に追われ、時間に追われ、見えない敵に追われる生活がはじまる。ここでは常に傍らにあった優しさ、温かさ、人間らしい心の通い合った会話とは無縁の日々が続くのだ。 「……剛龍」 「んー?」 剛龍は釣り竿を石に挟ませた…
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龍の涙・鏡の血43 怪の章(2)

ミラーは東の国の長、紀長に直筆の書面を託した。 自分は今、鱗の民がつくりあげた龍の国という小さな国で世話になっていること、生死をさまよう大怪我をしていたが龍の国の尽力により、一命を取り留めたことを書いた。もう少ししたら国へ戻り、すぐにでも龍の国と和平を結ぶ準備に取り掛かりたいことも記した。そして、この手紙を運んでくれた、東の国…
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龍の涙・鏡の血42 怪の章(1)

このところの剛龍さま、いかが思われますかな? ようやく一国を治める王子としての自覚が芽生えてきたというところですか? あの者の影響であろう。 しかし何故、剛龍さまは、我々の仇敵でもある、あの者に、あんなにも気を向けなさる? 異国の者同士、何か通ずるものがあったのでは? な、なんと!? 剛龍さまは、…
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龍の涙・鏡の血41 萌の章(11)

東・龍・鏡の国の三国、三者による会談がはじまった。 東の国と龍の国、それぞれの国の民同士の行き来はあっても、紀長と剛龍は数年振りの再会とあって、お互いの近況報告や、懐かしい話に花を咲かせていた。 ミラーとは初対面であったが、紀長が二刀流の使い手であることから、話題は剣術からはじまり、古今東西の名刀、剣へと移っていった。 …
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龍の涙・鏡の血40 萌の章(10)

ミラーと剛龍は会食の席につき、紀長を待った。 これから東・龍・鏡、三国の統治者による会食が開かれる。これがただの会談でないことは暗黙の了解であり、円卓を囲んで座るふたりの間にも緊張感が漂っていた。 「剛龍」 「なんですか?」 「これ……似合ってる?」 非公式とはいえ、三国の会談である。ふたりは正装をしていた。もちろ…
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龍の涙・鏡の血39 萌の章(9)

その日もミラーは訓練を行っていた。 二本の平行に並べられた棒の間に立ち、両腕で体を支えて歩く。ほんの少しの距離を行ったり来たり、それを何度も繰り返す。ミラーはあまりにも単調な運動に飽きていた。 「蛇良……」 「何でしょうか?」 「……飽きた」 「あぁ!?何だって!?」 「何でもねーよ!やるよ、やればいいんだろっ!」 …
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龍の涙・鏡の血38 萌の章(8)

剛龍が病室の扉を開けると、目の前に蛇良の顔があった。 「うぉぉぉぉっ!? 」 あまりにも近い位置に蛇良がいたため、剛龍は驚きの声をあげた。 「剛龍さま!?お怪我はございませんかっ!?」 「あ…あぁ…大丈夫や」 「それで…中にいる彼は?」 「…うん、やっと落ち着かれたようで、今、お休みになられた…」 「それじ…
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龍の涙・鏡の血37 萌の章(7)

「……ミラー殿……これは何のまねですか…?」 「お前たちの魂胆はわかっている。俺を人質にして、鏡の国を襲撃するつもりなのだろう」 「ミラー殿、それは誤解で…」 「動くな!」 ミラーはナイフを剛龍ののど元に突きつけていた。 「食事用のナイフだからと甘く見るなよ…私の手にかかれば、お前の喉もとを切り裂くなど、朝飯前…
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龍の涙・鏡の血36 萌の章(6)

ミラーが龍の国に辿り着いてから、ひと月あまりが経とうとしていた。 呪いはまだ生きているとみえ、傷は驚くべき速さで回復していった。腹部の傷は完治し、折れていた骨も繋がり、固まってきている。両腕については、元のように動かせるようになっており、今では胡蝶の手を煩わせることもなく、こうして、ひとりで食事も摂れる。本来この国は箸という、…
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龍の涙・鏡の血35 萌の章 (5)

ミラーが来てからというもの、胡蝶の一日はあっと言う間に過ぎて行った。 彼女には王女としての公務の他にも、看護師、また病院内の学校の教師という仕事も兼任していた。そこにミラーの介護という新しい仕事も加わったのだ。自分の時間というものは無いに等しい。にもかかわらず、彼女の日々は充実していた。 一日のはじまりは、ミラーの朝の身支度…
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龍の涙・鏡の血34 萌の章(4)

ミラーの目を覆っていた布が取り払われた。 再び、天井の二匹の魚の絵が眼に入った。だが、見えたのはそれだけで、声の主、女性の姿はなかった。どこにいったのだろうと首を左右に傾けていると、 「……ミラー様、あの…続きをさせていただいても構いませんか?」 ミラーの足元の方から声がした。 「あ……あぁ…うん…」 足首からふくらは…
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龍の涙・鏡の血33 萌の章(3)

心を込めて、お世話して差し上げなくては…。そう思った。…はずだった…のに……。 長い髪をそっと払うと、涼やかな目元が現れた。 淡色の肌、なめらかな皮膚、髪の色、彼は自分たちとはまったく違う種類の人間だった。 涙の跡のついた顔にそっと布をあて、優しく滑らせた。胡蝶はミラーの左眉の下に小さな傷痕を見つけた。だがそれは昨日今…
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龍の涙・鏡の血32 萌の章(2)

胡蝶は剛龍にいわれた通り、行き過ぎた化粧を落とした。でも、やはりそのままを曝け出すのは勇気がいった。だから、ほんの少しだけ粉をはたき、薄く紅をひいた。 そしてミラーのいる病室へ向かった。なぜかひどく緊張していた。それはおそらく、彼が鏡の国の王子という身分にあるからだ。と、同時にその部屋に入ることが楽しみでもあった。あんなにひどい言…
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龍の涙・鏡の血 31 萌の章(1)

剛龍は父、秀龍のもとを訪れた。 秀龍が病に倒れ、一年ほどになる。以来、経過は一進一退であった。今は療養のため、剛龍や胡蝶のいる宮殿を出て、離れにある庵で暮らしていた。林を抜け、浅い小川を渡ると、その居が見えてくる。ほとんどの公務は剛龍の手によって行われていたが、意見を仰ぐとき、また自身の決断に迷いがあるときは、ここを訪ねていた…
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龍の涙・鏡の血30  龍の章(11)

その後、剛龍はすぐに大臣たちを召集し、議会を開いた。 その席で鏡の国の王子を国賓として迎えることを発表した。当然のように大臣たちからは反対の声があがった。 「いったいどこの世界に侵略者を国賓として迎える国があるというのだ!」 「剛龍さまは、この国が以前のようになっても構わぬというのですか?」 「まったく……これだから………
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龍の涙・鏡の血 29 龍の章(10)

剛龍は部屋を出た。 外には蛇良だけがいた。 「胡蝶は?」 蛇良は首を振った。ミラーに化け物と言われ、病室を飛び出した後、部屋に戻ったらしいが、そこに入ったきりで、侍女たちが呼びかけても出てきてくれないという。 「くっそぉ…怪我さえしてなかったら、ぶっとばしてやるのに…」 「そんなこと、してみ?鏡の国から、何万という兵士…
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龍の涙・鏡の血 28 龍の章(9)

まさか、この男が、兄…? 忌まわしい呪いを「それは良かった」などとほざきおって!つまり、それは、私の命がこの男の腕ひとつ、考えひとつで、どうにでもなるからではないのか!? 「それはどのような意味だ?」 「は……意味…と申しますと?」 「私の背負った呪いにお前は『それは良かった』と言った、それはどういう意味なのだと問うてお…
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龍の涙・鏡の血 27 龍の章(8)

優雅な物腰に感情を抑制した物言い、そして何か底知れぬ力を秘めている、黒い瞳。 この男は一体、何者なのだろう? 「痛みは?まだ、ありますか?」 「えっ…あ、あれ…?」 そういえばいつの間にか体中を切り刻むような痛みはなくなっていた。その代わり、やや体が重く感じる。 「どうやら蛇良が痛み止めの薬を打っていったようですね」 …
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龍の涙・鏡の血 26 龍の章(7)

瞼の裏が明るくなってきた。朝がやって来たのだろうか? ミラーはゆっくりと眼を開けた。 その視界に入ってきたのは、はじめて見る生き物の絵だった。なんだ、あれは? 魚か?それにしては背びれが発達していて、まるで羽根のようにもみえる。その不思議な生き物が二匹、自分を見下ろしていた。 はて…? ここはいったい、どこなんだろ…
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龍の涙・鏡の血25 龍の章(6)

龍の国の歴史は浅く、国としての力も弱いものだった。 鏡の国の謀略により、国を追われた鱗の民たちは放浪を続けた。そしてやっとたどり着いたのが地の果てともいえる龍の谷だった。もはや、これまでかとあきらめかけた鱗の民の前に現れたのが白い龍だった。その龍は民たちに、谷底へと向かう七色に輝く道を示した。 それを希望と捉え迷いなく進…
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龍の涙・鏡の血 24 龍の章(5)

病室では剛龍の妹にあたる胡蝶が、体中に包帯を巻いた重傷患者の看護に当っていた。 胡蝶は王女という身分ながら、薬剤を調合する術に加え、簡単な医術を施す力も持っていた。 「容態はどうや?」 「ご安心下さい。脈も落ちついているし、排泄機能も正常に動き出しましたし…」 胡蝶は照れながら、寝台の下にある容器を指差して言った。 「そら…
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龍の涙・鏡の血 23 龍の章(4)

なんということだろう。あの瀕死の青年が、大国、鏡の国の王子であったなんて…。 しかし、いったい何のためにこの国へやってきたのだろう? 「この国を侵略しに来たに違いない!」 「ならばなぜ一人なのじゃ? 無敵といわれる、あの軍隊はどこに?」 「龍の谷を越えられたのはこの一騎だけで、他はみな川に飲み込まれたのだろう。さすがは冥…
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龍の涙・鏡の血 22 龍の章(3)

術衣を脱いだとたん張っていた気がゆるみ、剛龍はそのまま長椅子に倒れこんでしまった。 なんとか無事に手術は終わった。だが成功した、とは言いきれない。彼は一時的に生命の危機を脱しただけ、今後は数時間おきにその経過を確認する必要がある。とくに今夜は最も気をつけなければならない。長い夜になりそうだな…。そう思った剛龍は今のうちに仮眠をとっ…
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龍の涙・鏡の血 21 龍の章(2)

赤い城門が見えてきた。剛龍は低空でそのまま艶鳥蹴狗とともに門をくぐった。 城の中にはいると、胡蝶(こちょう)が待ち構えていた。 「兄上、さぁ早く、これに着替えて下さい」 胡蝶は医術を施すときに付ける白い術衣を差し出した。胡蝶自身もそれを身につけ、まとめあげた髪を白帽の中に入れていた。 「怪我人? 急病人? お産? どれ?」 …
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