テーマ:小説

遥か、東の空へ51-第4章(10)-

陽が沈みかけるころ、ふたりは小屋を出た。 タチャを馬に乗せるとナカマールは手綱を引き、ゆっくりと歩いた。馬に乗せる荷物は何もない。タチャだけをそこに送り届ければよいのだ。 話すことはなにもなかった。未来の話をすることはできない。かといって過去の話をすると、もう二度と逢えないような気がした。今、隣にお互いがいる。それを感じるだ…
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遥か、東の空へ50-第4章(9)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 ナカマールは飼っていた怪物が目覚める気配を感じた。 内側に飼っていた得体の知れない怪物。そいつが再び目を覚まそうとしていた。 まだだ。 「えっ?」 「?」 「あ、いや、なんでもない…」 『まだだ』とはどういう意味なのだろう…
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サーモンピンクな俺たち3 ~青い時代~ 後編

無造作に散らしてあった黒く短い髪は強烈な風を受けたようにすべて逆立っていた。 腕を組み、足を広げ、ふんぞり返って座っている。それだけでも近寄りがたい雰囲気を出しているというのに、耳にはイヤホンが差し込まれており、完全に外部との接触を断ち切っていた。 なにがあったのだろう。 部活の仲間達と冗談を言い、大きな口を開けて…
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サーモンピンクな俺たち3 ~青い時代~ 前編

サーモンピンクシリーズ第三弾。 誰かさんの希望を取り込み、学園物にしてみました(笑) 新学期第一日目。今日はクラス替えの発表がある。その混雑を避けるためにいつもより早めに来たのだが、同じことを考えているものが大勢いたようで、すでに掲示板の前は押すな押すなの大騒ぎになっていた。その輪から離れたところでも、ハイタッチするもの、急…
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遥か、東の空へ49 -第4章(8)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 それが出来るのは私しかいないでしょう。 ナカマールはコーイチ王子の手引きで北の塔を抜け出した。そして城の地下に張り巡らされている秘密の抜け道を通り(何のことはない。城の一階部分の道をそのままなぞってつくられているそうだ。城内の地図ならナカマ…
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遥か、東の空へ48 -第4章(7)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 コーイチ王子から告げられたナカマールの最後の任務。 それは今夜、タチャを北の森へ送ることだった。そこに黒の魔王との約束の場所があるらしい。供はナカマールひとり。誰にも見つからないように、ふたりで向かい、タチャをそこに送り届けた後、ひとり…
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遥か、東の空へ47 -第4章(6)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 もうこのままずっと眼が覚めなくてもいい。 夢の中で生きよう。 そこでならいつだってタチャに会える。 哀しい別れを経験せずにすむのだ。 この苦しみは誰にもわからない。 誰かにわかってもらおうなんて思わない。 自分の苦しみは自…
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遥か、東の空へ46 -第4章(5)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 黒ずくめの男はタチャの前にある紙を手に取るとナカマールに見せた。 それはとても古い紙だった。書かれている文字も特殊でナカマールには解読することができない。唯一わかったのは古いインクで書かれた国王のサインだけだった。 「誓約書」 …
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遥か、東の空へ45 -第4章(4)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 「おい!こら!ナカマール!待ちなさい!」 ナカマールは重臣たちの声を扉で遮った。ついでにその取手に暖炉の火かき棒を差し込み、内側から開かないようにしてやった。 この留学話には何か裏がある。ナカマールは最初からそう感じていた。 「第三王子の側…
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遥か、東の空へ44 -第4章(3)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 「ジュンノ、剣をおろせ!」 「タチャ、わたしが三つ数える間にこの部屋を抜けて隠し扉から外に出ろ」 「ジュンノ!」 「タチャ、ここはジュンノ王子の言う通りに……」 「でも……」 「いち」 「………」 「にぃ」 「タチャ、早く、…
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遥か、東の空へ43 -第4章(2)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 『成人の儀』から七日目の朝。二人と一匹と一羽で朝食を摂っているときだった。 コウモリの数え方が鳥と同じでいいのかどうかはわからないが、まぁ、つまりそういうことだ。 あの日から、コウモリのカーメまでもがこの部屋の住人となった。 そ…
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遥か、東の空へ42 -第4章(1)-

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 ずっとずっと続けばいいと、こんな幸せな毎日が…… 続くと思っていた。続けたいと思っていた。 「幸せ」というものは、それを失って始めて、それまでの何気ない日々、当たり前のように思っていたことがそうであったことに気付くのだ。 「不幸…
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遥か、東の空へ41 -第3章(11)- 

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 「タチャ、行こう!」 ナカマールはタチャの手を取った。 「行こうって?どこに?」 「お前らもこい!」 ナカマールとタチャ、オオカミのコーキそして新しく加わったコウモリのカーメは寝室を抜け、バスルームの隠し扉を開け、秘密の抜け道を通って…
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遥か、東の空へ40 -第3章(10)- 

タチャの白い耳朶が紅く滲んできた。 ナカマールはポケットからチーフを取り出すとタチャの耳にあてた。白いチーフに点々と紅い色が付く。だが幸いにも傷は浅く、すぐに血は止まった。 「消毒しなきゃ」 やんちゃな第三王子の部屋には応急処置用の薬箱が置いてある。綿に消毒液を染み込ませ、タチャのやわらかい耳朶にそれを当てた。タチャの身体がび…
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遥か、東の空へ39 -第3章(9)- 

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 いゃぁぁぁぁっ!!!! ナカマールは耳を押さえて座りこんだ。 「ナカマーゥ!ナカマーゥったら!」 「おばけなんてなーいさ、おばけなんてうーそさ、ねーぼけたひとがみまちがえただーけさ」 「……コーキ、頼む」 座りこんで動こうとしな…
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遥か、東の空へ38 -第3章(8)- 

『……気がついたようだぜ』 低い声とともに薄く開けた目に入ってきたのは、今朝いちばんに行われた「清めの儀式」のときにいた男の顔だった。 振り出しに戻った?どういうことだ?今までのことは全部、夢だったのか? 「ナカマーゥ……ナカマーゥ……」 タチャの声……?タチャ、そこにいるのかっ! 「タチャ!?タチャっ……あ、あれ…
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遥か、東の空へ37 -第3章(7)- 

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 だが、タチャと王女は一向に踊り出そうとしなかった。 「なにをやっているんだあいつは?男性から手を差し出さないと始まらないだろうが」 コーイチ王子のいらついた声が聴こえてきた。 「あぁーーーっ!しまった!」 「どうしたジュンノ?」 「…
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遥か、東の空へ36 -第3章(6)- 

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 誰もがその出で立ちに驚いた。 まっ白なミニドレス風の上衣には小さな宝石が散りばめられている。それはシャンデリアを反射し、様々な色で輝いた。大きく開いた襟周りには白い羽根がつけられ、ドレスの裾には薄い布が何段にも重ねられている。その下は白…
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遥か、東の空へ35 -第3章(5)- 

※この物語はフィクションであり、登場する団体・人物などの名称はすべて架空のものです。 城の外にはもうすでに大勢の民が集まっていた。 『お披露目の儀』はその前の『謁見』が少々押したせいで、午後のお茶の時間と重なってしまった。だがこの後も予定が詰まっているので、そのまま休憩をとらずに実施されることになった。 国王と三人の美し…
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遥か、東の空へ34 -第3章(4)- 

王族での昼食会は何事もなく和やかに済んだようだ。 生来の飽きっぽさ、落ち着きのなさが出てやしないかと心配したが、礼儀作法に厳しいコーイチ王子が眼を光らせていただろうし、何か粗相をすれば、すぐにお優しいジュンノ王子が助けてくださったことだろう。 昼食会場からぞろぞろと王族たちが出てきた。ナカマールたちは扉の外で彼らを見送っ…
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遥か、東の空へ33 -第3章(3)- 

厳かに『成人の儀』が始まった。 広間には近隣諸国の王族代表者を始め、大臣たちがずらりと並んでいた。正面に設えた祭壇には国王を真ん中にして、右側に第一王子のコーイチ様、左側に第二王子のジュンノ様が立っておられる。国王は黒、第一王子は赤、第二王子は紫がかった濃い灰色の上着をお召しだ。 あー、やっぱりタチャは青より赤だよなぁ。でも…
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遥か、東の空へ32 -第3章(2)- 

今の聞かれた? うん、聞かれたよなぁ……やっぱり。 側近に取り立ててほしいと頼んだことは一度もない。これはほんとうのことだ。 そういう命令がくだされたから、こうしてそばにいる。これもほんとうのことだ。 だからといって、嫌嫌やっているわけではない。これもほんとうのことだ。 だけどそれがはたしてタチャに伝わっただろうか…
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遥か、東の空へ31 -第3章(1)-

10の月から4つ目日。ジャニー・イースト・キングダム第三王子タチャは16歳になった。 今日は朝からこなしてゆかなければならない儀式が詰まっていた。もちろんナカマールもそのすべての儀式に同行する。 まず清めの儀式が執り行われる。 神聖な泉から汲んで来た水を沸かした湯で、すみずみまで身体を洗うのだ。それらの儀式は王子の私室にあ…
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遥か、東の空へ30 -第2章(18)- 

素早くタチャの両腕を両足で挟み込みこみ、動けないようにした。 「なっ……なにをすぅっ!?」 「少々、ご辛抱を」 「!?」 左手でタチャの右肩を押さえつけ、右手を長い髪の中にいれ、そのままかきあげ、顔を横向かせた。細く長い、白鳥のような首が露わになった。 「やぁだっ!」 「すぐにすみますからっ!」 「!?」 首筋に顔を…
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遥か、東の空へ29 -第2章(17)- 

ナカマールはすぐに部屋へ戻った。 広い庭を突き抜け、階段を駈け昇り、長い廊下を疾走し、タチャの部屋に辿り着くと、ノックもせずにドアを開けた。 「なんでっ!?」 ドアが開かない。鍵をかけられているようだ。 「あ、そっか……」 部屋を出るときに鍵をかけたのは自分だった。ナカマールはあわてて鍵を取り出し、穴に差し込んでまわした。…
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遥か、東の空へ28 -第2章(16)- 

側近に任命(仮)されたといっても、一日中、王子にくっついているわけではない。 様々な連絡事項や要望は一度、側近を通してから王子に伝えられる。そしてそれに対する返事や回答はその反対の道を辿った。だからナカマールはしょっ中、呼び出されて出掛けていた。第三王子成人の儀を控えていることもあって連絡は多種多様多岐にわたり、あっちへいった…
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サーモンピンクな俺たち2 ~夜明けの食卓~

【緊急企画】サーモンピンクシリーズ第二弾!(いつの間にシリーズ化?) ※えろいのとぐろいのが苦手な方はご注意ください。 俺はこの時のために毎夜、研ぎ磨いていたそいつをケースから取り出した。 そして、ぐにゃりとあらぬ方向に手足を曲げている彼を見降ろした。 その手足をきちんと揃え、生きていたときと同じよう…
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遥か、東の空へ27 -第2章(15)- 

ナカマールは再びカーテンを閉めた。 と、ぶしゅんっ!と、まるで犬がくしゃみをしたときのような声が耳に入った。 あぁ、そうだろうな。人でなしというくらいだから、人ではないのだろう。犬のようなくしゃみをして当然だ。 後ろを見ず、隣の部屋へ戻ろうと足を踏み出した。と、灰色がかった渋みのある薔薇色の長い毛足の絨毯の上に、丸めて置いてあ…
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遥か、東の空へ26 -第2章(14)- 

タチャのあまりにも身勝手なふるまいに憤慨しながら家に戻ると、庭師の親方が日焼けした顔を蒼白にして待っていた。 「ナカマールっ!いままでどこにいってやがったんだぃ!」 「えっ?あ、いや、そのぉ……お、おうじ…じゃない、温室にこもっていて…」 「ナカマール、お前、いったいなにをしたんだぃ?」 「えっ…・・なにって………」 …
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遥か、東の空へ25 -第2章(13)-

ナカマールはオオカミをベッドルームに閉じこめると、ひとり、書斎(ただしタチャの)に籠って考えた。 タチャと国王と、どちらにも忠実であるためにはどうすればよいのか? そして名案を捻り出した。 我ながらいい案だと思った。興奮した。これが認められたら、例え相手が野生のオオカミだろうと、クマだろうとなんだろうと、仲良く…
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